37675290_d05e9673e6_z人生を変えたい、という欲求を持つ方はそれなりにいる。もっと成功したい、というストレートな欲求のみならず、「もっと楽に暮らしたい」「世の中の役に立ちたい」なども、その部類に入る。

 

さて、そのような方々が人生を変えることに成功しているかといえば、どうもあまりそういうことにはならない。大きなことを言っていても、5年、10年経っても変わらず、という方がむしろ圧倒的多数だ。

なぜ人生は変わらないのだろうか。

そこには「現状を捨てる力」が大きく関わっている。

 

 

大前提として、人生を変えたいという欲求がかなえられるのは、「成果を出した時」である。金銭的なものにせよ、名誉にせよ、安定した生活にせよ、それは何かを成し遂げることによってかなえられる。

例えば望む結果を得たい、という意味では結婚だって、就職だって、何かしらの成果とみなすことができる。つまり、成果を出すことが、人生を変えることだ。

 

では「成果を出す」にはどうすればよいだろうか?

この問いには唯一の解がある。それは「行動する」ことだ。結婚も就職も、仕事もお金も、行動することによってのみ手に入る。

手を動かし、体を動かすことでしか、成果をあげることはできない。

 

では、更に突き詰めて考える。「行動する」にはどうすればよいだろうか。

それには2つのものが必要だ。それは、やり方と、やる気の2つだ。やり方と、やる気があれば、人生を変えることができる。自己啓発書やその手のセミナーが売れるのは、この2つを与えてくれそうな気がするからだ。

至極当たり前の話だが、この2つのどちらが欠けても成果は出ない。

 

 

「やり方」は突き詰めれば知識のことだ。入手するには、仕事や勉強で習得するか、一緒にやる仲間から借りればよい。webで調べても、本を読んでもよい。

だから、どうやって知識を得たら良いのかわかりません、という悩みを持つ人は圧倒的少数だ。

 

むしろ問題はやる気だ。やる気が継続しないという方は多い。本やセミナーで焚き付けられても

「面倒だな」

「現状でいいや」

という誘惑に克つのは難しい。現状維持は目標達成の圧力よりも遥かに魅力的だ。

どんなに努力する人でも、この誘惑に負けた経験のない人はいないだろう。実際、「高邁な目標だから、やる気が出る」はウソだ。それができるのは聖人君子だけである。自己啓発にのめり込む人が冷笑されるのは、このためだ。

 

 

では、継続的なやる気は何から湧くのか。

それは、自ら自分を追い込むことによってのみ生じる。そして、その力の源泉は「現状を捨てること」だ。

やる気を支配するもの、それは捨てる力だ。

多くの人は現状を変えたくない。捨てたくない。人だけではない。組織も、企業も同じく、変われないのは古いものややり方を捨てられない。

だが、捨てることで、廃棄することで人は新しい力を得ることができる。

 

百年法、という小説がある。

原爆が6発落とされた日本。敗戦の絶望の中、国はアメリカ発の不老技術“HAVI”を導入した。すがりつくように“永遠の若さ”を得た日本国民。しかし、世代交代を促すため、不老処置を受けた者は100年後に死ななければならないという法律“生存制限法”も併せて成立していた。

この本は「死ななければならない」という恐怖がクローズアップされがちだが、実は主題は異なる。

この小説が描いているのは「ヒトが死に、世代交代することで社会が前進する」という身も蓋もない真実を我々につきつけることだ。 

「生を捨てられない」社会は、ひたすら停滞するのみであり、その姿は醜悪ですらある。 

 

 

今年の4月、TIME誌が発表した「世界で最も影響力のある100人」に、村上春樹氏と並んで選出された日本人がいる。近藤麻理恵氏だ。

近藤麻理恵さん、「世界で最も影響力のある100人」に

昨年10月に米国で出版した「人生がときめく片づけの魔法」が67万部超のベストセラーに。「kondo」を近藤さん流に片づける意味の動詞として使う人もいるという。イタリアやフランスでも刊行され、世界でシリーズ累計300万部の人気になっている。(朝日新聞)

「片付けで人生が変わる」と銘打たれたその著書について、当初は片づけ程度でまた大袈裟な……と思ったが、呼んでみると仕事に共通する部分があると感じる。

なぜかといえば、本の半分が「捨てる」ことに割かれており、捨てることの重要性、捨てる難しさについて本質的な洞察があるからだ。

 

近藤氏は、「捨てることで人生が変わる」と著作の中で主張する。

読者からは、「起業しました」「何が必要かわかり、旦那と別れました」「会いたいと思っていたヒトから連絡が来るようになった」「仕事が取れるようになった」「夫婦仲がよくなった」「なぜか三キロ痩せた」と、捨てることと全然関係のないような話が寄せられているそうだ。

しかしそれらの声は一概に眉唾とも言えない。なぜならば「捨てる力」が活力を生み出すからだ。読者は「捨てる力」を手に入れることで、物事への効果的な対処法を身につけることができたのだろう。

 

 

今の、可もなく不可もなくという状態を捨てられる力、それなりに楽で快適な状態を捨てられる力。

部屋の片付けと同じく、これが人生を変える真の力だ。

 

 

 

 

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