成果主義はどこへ行っても評判が悪い。
私は人事コンサルティングをやっていたが、「成果主義」ほど従業員に評判の悪い制度はあまり見たことがない。逆に、経営者は概ね「成果主義」が大好きである。
なぜこのような食い違いが出るのだろうか。これは、簡潔に説明できる。成果主義の意味するところが、経営者と従業員で全く異なるからだ。
まず、多くの経営者は成果主義をこう捉えている。
成果主義は、結果が出せなければ、給与が下がるシステム
つまり、成果主義の主要なターゲットは、成果を出していない人に罰を与えるシステムとして利用している。注意すべきは「成果を出せば、給与が上がる」がメインではないという点だ。
逆に、多くの従業員は成果主義をこう捉えている。
成果主義は、結果を出すと、給与が上がるシステム
つまり、成果主義の主要なターゲットは、成果を出している人に報いるシステムとして、捉える。経営者と反対に「成果を出さなければ、給与が下がる」はメインではない。
この意識のちがいは大きい。要は、お互いに都合の良い部分しか見ていない、ということだ。
だが、この勝負は必ず経営者が勝つ。
なぜなら、目標値を決定する権限を経営者が持っているからだ。つまり、達成可能性は経営者がある程度自由にコントロールが出来る。
だから、成果主義は「成果を出せなければ、給与が下がる」という部分だけがクローズアップされ、成果主義の評判は下がる一方なのだ。
簡潔に言えば、殆どの会社において「成果主義は総額人件費を下げるために導入される」のである。事実、私は成果主義が導入されて、従業員がメキメキ成果を上げるようになり、結果として総額人件費が上がり続けた会社を見たことがない。
もちろん、成果を出さない従業員にたいして罰を与えることは必要である。成果を出さない従業員を放置することは、経営者を侮る従業員を創りだし、組織のモラルを低下させる。
だが、成果主義を単なる「罰則システム」として用いることもまた、経営に対する不信、「結局、成果が出せる人なんて一部だけだろう」という疑念を生む。
成果主義の導入は、「成果を出せるやり方」がある程度、従業員と経営者の間で共有されていなければ、制度としては二流である。
それが共有されていなければ、結局経営者が取るべきリスクを従業員に転嫁しているだけだからだ。
導入を考えている会社は、十分注意されたい。
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(Photo:Marcin Skrzątek)