5537336223_0a45b6cc99_o「情報共有」というテーマは会社の大きな課題であると同時に、一大ビジネスでもある。

試しにGoogleで「情報共有」と検索してみてほしい。

「営業支援システム」

「社内SNS」

「グループウェア」

など、数多くの広告が表示されているだろう。この手の商売は、会社の悩みが尽きることがないので良い市場でもある。

 

だが、うまく情報共有をしている会社は残念ながら殆ど無い。大事だと思っていても、皆できない。前職でも「社内SNS」はあったが、活用している人は全体の1割から2割程度の人だっただろう。

なぜ大事だとわかっていても情報共有ができないのか。

 

答えは簡単だ。殆どの会社は「情報の入れ物」を導入することには熱心だが、その入れ物に情報を誰がどう入れるのか、考える事については熱心ではないからだ。

そういった入れ物は本来、自発的に情報を入れてもらわなければ質の高い情報が集まらないのだが、ほとんどの組織は「入力をルールにすれば良い」と考えているため、ろくな情報が集まらない。 

あなたがベテランでノウハウもある営業マンだったとして、あなたは情報を入れたいと思うだろうか?

逆に、あなたが新人だったとして、皆に役立つ情報を入れることができるだろうか?

 

 

どんな優れたソフトウェアやサービスであっても、中に情報を入れるのは、結局のところ社員だ。だが社員は本当に情報共有を望んでいるのだろうか。

例えばあなたが営業だったとする。

今日電話した件数、会いに行った顧客の数、そこで行われた会話、顧客から得られた貴重な知見、そういったものを「すべて入力してください」と言われて、あなたは本当にそれをやるだろうか。

どう考えても、喜んでそれをするひとは少ないだろう。

実際現場の本音はこうだ。

「自分の行動が見えるようになってしまう」

「自分が馬鹿なことをしているのを上司に知られてしまう」

「監視されたくない」

みな口では情報共有してほしいと言う。 だがそれは、皆が世界平和が大事、と言っているレベルと変わらない。総論賛成各論反対、それが現実だ。 

要するに、経営陣が「情報共有させたい」と思っても、従業員たち、特にノウハウを持っている従業員は「自分が特別な存在でいるために知られたくない」「大した仕事をしているわけではないので、知られたくない」と思っている。

 

 

一方で 会社以外では人々の行動は異なる。SNSやメッセンジャーで情報共有は熱心に行われる。会社にいる時とは正反対の行動だ。

なぜ、皆は情報共有するのだろうか。

恐らくこういうことだ。

人は見たいと思う情報しか見ないし、自分が評価されたり、利益になる情報しか流さない。SNSは、それを叶えるための装置として機能しているがゆえに、積極的に利用され、情報共有される。

つまり、会社で情報共有を促す場合、そういった人の性質を前提として情報の入れ物が設計がされていなければならない。

 

 

例えば、あるサービス業の会社は、社内のノウハウデータベースを作るために単純なことをした。

 

1.各部署のエースに、特別ボーナスを支給し、ノウハウを入力してもらった。

2.社員全員が閲覧できるようにし、「よく見られているページ」をランキングにした。また、FAQ方式でページを表示し、自分と同じ悩みにすぐアクセスできるようにした。

3.各部署のエースに「質問されたら、「データベースを見ろ」と社員に伝えること」という指示をした。

4.頃合いを見て、「誰でもコメントを書き込める」にし、良いものは記事に反映させた

 

今では、かなりこのデータベースはよく使われているそうだ。

 

 

成功のポイントをまとめると、4つになる。

・最初にある程度の情報量を入れてしまう

・すぐに役立ちそうな情報をランキングなどでわかり易く提示する

・信頼できる人から利用を勧められる

・自分も発信できる

 

そのために、経営者は「このデータベースがいかに有用で、自分たちのメリットとなるか」を、各部署のエースに一生懸命説いて回ったそうだ。

 

これらを知らなければ、情報共有はなされない。情報の入れ物だけ作ってもダメなのである。

 

 

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(Photo:opensource.com)