4671039636_80886d484f_z昔訪問したある会社で「嫌ならやめろ」と口癖のように言う経営者に出会ったことがある。とてもワンマンな社長であったが、商売がうまく、会社の調子はとても良かった、

が、5年半でその会社は消えた。

 

その会社に在籍していた社員に、昔の話を聞いたところ、

「調子がいい時は、嫌ならやめろ、で良かったんですがね。事業の成長が止まった瞬間、優秀な人から辞めていきました。社長は裏切られた、とか言ってましたが、まあ、そんなもんでしょう。」

 

 

なぜ、こんなことが起きるのか。

経営者が「嫌ならやめろ」と言うと、会社の調子がいい時は、皆「使えない奴は要らない」と経営者に賛同し、辞めていく人物に大した注意を払わない。

また、「やめてほしくない、優秀な人」は、社内での待遇がよく、成功もしていて仕事が面白いのでその会社を辞めない。

 

だが、永遠に業績の良い会社はない。少し業績が横ばい、あるいは下降線を取った時、どうなるか。

経営者は、「いまこそ、社員の力を結集して事にあたろう」と社員を鼓舞するのだが、優秀な人は「行き先がいくらでもあって、他のほうが待遇が良い」ので転職の誘いが魅力的になる。

また、彼らはかつて社長が「嫌ならやめろ」と言っていたことを思い出し、「まあ、自分も成果が出なくなったらそう思われるだろう」と、引いていく。

みな、冷遇された社員のことは憶えている。たとえその人のことが好きでなくても。だから、経営者が「嫌ならやめろ」と言うと、会社がピンチの時には必ず出来る人から辞めていく。

 

 

優秀な人は、その経営者にかなりの恩があるはずだが、内心はこう思っている。

「社長、お世話になりました、あなたの力はもう必要ないですよ。あなたがかつて他の人にしたように、もうあなたは不要なんですよ。」

ということだ。

残念ながら、ほとんどの社員、腹心の部下はあなたが好きだからついてきているのではない。彼らにも生活があるし、守るべき家族がいる人もある。経営者が「嫌ならやめろ」と社員にいうことを、苦々しく見ている。

 

経営者は「嫌ならやめろ」といくらでも思って良いが、公言してははいけない。ピンチの時に必ず、裏切りがある。しかもそれは、できない人ではなく、あなたが頼りにしている人からだ。

 

 

 

 

・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします)

 

・【大学探訪記】を始めました。

「研究が楽しい」「研究成果を知ってほしい」「スタートアップを立ち上げた」

という学部生、大学院生、研究者、スタートアップの方は、ぜひ blogあっとtinect.jp までご連絡下さい。卒論、修論も歓迎です。ご希望があれば、当ブログでも紹介したいと思います。

【大学探訪記 Vol.9】1年に13万件ある日経新聞の記事を、人工知能の一分野「機械学習」によって分類・分析する。

【大学探訪記 Vol.8】雲とチリの相互作用を、スーパーコンピュータで再現する。

【大学探訪記 Vol.7】ゲームからはじまる学問だってある

 

・ブログが本になりました。

 

 

 

(Photo:Fabio Aro)