仕事をしていて、部下や後輩から
「量を取るべきでしょうか?質を取るべきでしょうか?」
という質問をされたことはないだろうか?
「メディアの運営」について、「読書」について、「営業電話」について、質と量はトレードオフなので、どちらを取ればいいですか、という聞き方だ。
私も、現場においてこのように上司に尋ねる社員の方々を数多く見てきた。
例えばあるオウンドメディアを運営している会社では、このような質問がメディアの責任者に向けられた。
「記事の質」と「記事の量」のどちらが大切ですか?
その責任者は、すかさずメンバーに聞き返した。
「どっちが大事だと思う?」
メンバーの一人はこう答えた。
「量です。量をこなせば、質がついてきます。」
また、別のメンバーはこう答えた。
「質です。質が低ければユーザーはこのメディアに2度と戻ってきません。」
責任者は、続けて2人にこう質問した。
「量が多いけどマズい定食屋と、味は良いけど、お腹がいっぱいにならない定食屋、どちらに行く?」
部下たちは言葉に詰まっている。
「量……が多いだけではダメですね。」
「味が良いほうがまだましかな…でもお腹がいっぱいにならないのはちょっとね…」
責任者は言った。「では、次の質問。服を買いに行ったとして、カッコ悪い服がたくさんおいてある店と、デザインの良い服が置いてあるんだけど、サイズや品数が無い店、どちらに行くか?」
これも部下たちは返答に詰まっている。
「場合によります。カッコ悪くても安ければなんとか……でも、ダサいのはちょっと…。」
「いや、サイズがあればデザインが良い方に行きます。いや、でもサイズがいつも無いと、行かなくなるかな……」
責任者は言った。
「もう気づいていると思うけど、結局ユーザーの気持ちになれば、どちらも大事だ。一つ一つの記事の質が低ければ、二度とこないし記事の数が少なければ、再訪問しない。というか忘れてしまう。
というか、そもそも「質」か「量」かには、「両方大事に決まってるだろ」という回答しかあり得ない。
あなた達が言う「質」と「量」のどちらが大切ですか?という問いは、どこで手抜きすればいいですか?という問いなのでは?手抜きしたら、ユーザーにはすぐに分かる。」
「そうですね…。」
責任者は続ける。
「質と量の両方を追求することは、考えないとできないし、普通では無理だと思われている。でも、普通では無いことを目指さずして、成果はあがらない。考えるのをやめたから、「どちらかしかできない」と思うのでは?
ただ、あなた方の気持ちもわかる。「両方追求しろ」と言われても「無茶言うな」と思う人も多いだろう。私もそうだった。」
部下たちは言う。
「具体的にはどうすればいいのでしょう?」
責任者は言った。
「「質」か「量」か、という抽象的な問いをしてはいけない。質はきちんと定義すること。そして量は、数値目標をきちんと持つこと。これが第一歩だ。質か量か、と質問してはいけないのは、それが思考停止を引き起こすからだ。」
「なるほど」
「基本的に、ユーザーの目は非常に肥えている。質は最低限、「自分が見たい」「他の人にお薦めしたい」と思うレベルは絶対に担保すべきだ。
もちろん量も妥協すべきではない。1日1更新もされないメディアは、個人のブログにも劣る。「メディア」と名乗るなら、そこは妥協するポイントではない」
「そりゃそうですね、我々はプロですもんね。でも……次にどうすべきですか?」
「プロセスアプローチを使う」
「プロセスアプローチって、何ですか?」
「単純に言えば、仕事を細かいステップに分解して、ステップ毎に仕事を改善すること。
例えば記事をつくるために必要なステップは、企画、構成案づくり、構成案のレビュー、構成案の修正、下書き、下書きのレビュー、執筆、校正、リリースといったものだ。
全体を見ると改善の余地がなさそうでも、ステップを見ると改善の余地がかなりある。例えば構成案づくりを標準化して、チェックリストを作る、企画案のデータベースを作っておく、レビュー項目を決めておくなどだ。」
部下たちの顔が曇る。
「そんな面倒なことしなけりゃいけないんですか?」
「面倒なことをしておけば、後で楽ができるよ。そもそも、質と量を両方とも追求するには、極限まで業務を効率化する必要がある。」
「わかりました、取り組んでみます」
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(natalie)