「仕事は所詮、壮大な暇つぶしだよ。」と、その経営者は言った。
「暇つぶし…。」
「そう思ったことはないかい?」
「暇つぶし、というよりも生活のため、という方のほうが多いと思いますが…。」
「そうかもしれない。でも、生活をするためだけなら、仕事なんてなんだっていいじゃない。出来るだけ安定した職業につくのが最終目標ってこと?」
「確かに、それもちょっと違いますね。」
「そうだろう、楽しい仕事をしたい、世の中の役に立つ仕事をしたい、やりがいのある仕事をしたい、そういう人のほうが多くないか?」
「最近はそうですね。」
「だろう?だから、誰がなんと言おうと、「仕事は所詮、暇つぶし」ってことだよ。」
「もう少し真剣に考えている人も多いと思いますが…。」
「そうかな?でも、うちの社員には「暇つぶしだから」って言っているよ。」
「…。」
「誰にでも、仕事よりも大切なことがある。」
「社長にもですか?」
「当然だよ。」
「例えば、どういうことでしょう?」
「家族とか、友人とか、そういったものは仕事より大事だろう。」
「まあ、それはそうですが…。」
「だから、ウチはみんな定時には帰ってもらうし、子育てもきちんとやってもらう。」
「仕事は大丈夫なんですか?」
「成長成長、っていうから、大変なんだよ。困らない程度に程々を狙えば、さほど仕事は難しくない。大体、なぜ会社を大きくしなければならない?殆どの場合は、経営者の野心に社員をつきあわせてるだけだよ。」
彼は事も無げにそう言った。
経営者にしては変わった考え方だ。私は不思議に思った。
「…。社長でそのように考える方は珍しいですね。なぜそのように考えるようになったのですか?」
「私も昔は、自分の野心に社員をつきあわせていた。かつて私には大きな夢があり、そのために多くのものを犠牲にした。家族、友人、社員もだ。」
「…。」
「しかし、その結果、残ったものは何もなかった。結局、最も大事なものを犠牲にして、暇つぶしをしていただけだったよ。」
「そうだったんですか。」
「それ以来、私は会社の成長を目標にすることをやめた。楽しくやれるくらいの規模で、楽しくやれるくらいの一生懸命さで、それが私にとっては重要なんだ。」
真剣に仕事をするのは尊いことだとは思う。
しかし、そればかりが人生ではない、ということを彼は言っていた。
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