3367993034_db20f606d7_zある会議に出席していた。ある商品プロモーションの企画会議だった。

そして、その日はある若手が、商品プロモーションの企画案を発表する手はずであり、10数名の参加が見込まれていた。今回の商品は社長の肝いりのものであり、皆が注目する企画会議であった。

 

会議開始から5分ほどして、若手の企画案のプレゼンテーションが始まった。

プレゼンテーションの技術は稚拙なものの、骨格は概ねよく練られた案だった。ただし、それなりのお金がかかる案であり、社長がイエスというかどうかは、微妙な状態だ。

 

プレゼンテーションが終わり、質疑応答に入る。その若手が「何か質問はありませんか」というと、何名かが手を挙げる。

 

一人の営業マンが指名を受け、質問を行った。

「かなりのお金がかかる案だと思いますが、費用対効果はどのようにお考えなのですか?」

確かに、若手は費用対効果について説明を行っていないわけではなかったが、その部分については多少説明不足を感じる部分ではあった。

若手は答えた。

「費用対効果は高いと思います。ただ、この予想が正しいかどうかは、最初のマイルストーンでデータを検証したいと思っています。」

「そういうものは、事前の検証が必要ではないでしょうか?現状だと、あまりにデータが足りない。どうするつもりなのですか?」

「……そうですね、いくつか方法を考えます。」

 

 

さらに別の一人が質問をする。

「この、「広告作成」について、このラフスケッチだけだと、広告のイメージがわかないのですが?」

「広告のイメージは、まだ業者選定の段階にあります。幾つかのコンペを経て、選択するつもりです」と若手が言う。

「これだけだと、判断できないよ、きちんとある程度固めてから、ここで発表してくれないと」

「……はい。」

 

若手は、明らかに当惑していた。

 

そこへ別の部署の課長が、スッと割り込んできた。

「いいねえ、この企画。」

開口一番、彼は言った。

「先ほどの費用対効果のところだけど、先日ウチの部署でやった施策のデータが使えるかもしれない。それで一つ、検討してみてもらえないかな。確かに検証するための材料が少ないけど、行けそうな気もする。」

「はい。わかりました。」

「あと、広告のイメージは◯◯という代理店に一度相談してみてはどうかな。たしか彼らが今までに使った業者が似たようなことをやっていた可能性がある」

「ありがとうございます、助かります」

 

そして、会議は終了した。

 

 

会議が終わり、その課長は若手のところへ行き、何か情報を渡して帰っていった。先ほどの質問をした営業マンはすぐに出て行ってしまった。

 

その課長は私のところへ来て、「あの企画、どうでしたか?」と私に聞く。

「良い企画だとと思います」

「まあ、そうなんですがあの営業たちにも困ってるんですよ。」

「どういうことでしょう?」

「いやね、会議には2種類の人達がいるわけです。他者を攻撃することで、有能さを示そうとする人と、助けることで、有能さを示そうとする人です。」

「……?」

「さっきの営業たちは、あの若手の案を攻撃することで、全体にアピールしていたのですよ。「我々は優秀だぞ」ってね。でも、案は何も出さない。若手の言いたいことを深く理解しようともしない。

でも、それじゃダメなわけですよ。会社なんだから、みんなで協力したほうが良いに決まっているし、「もっと良くすることができる」アドバイスをしたほうが全体として遥かに有益じゃないですか。それをわかってくれると良いんですけどねぇ。

まあ、追求するほうが手助けをするよりは遥かに簡単ですからね。」

 

 

そんなものなのだろうか。私は過去に参加した会議を思い返した。

たしかに、そうかもしれない。

 

 

 

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