「あの人はすごい」という言葉をよく耳にする。会社でも、「あの社長はすごい」とか、「あのリーダーはすごい」とか。本の中でも、テレビでも、「すごい」という言葉は頻繁に使われている。
人のことを「すごい」と思えることは多分、大事なことだ。
「自分はまだまだだ」と振り返ることで得られるものは大きい。謙虚な心をもつことを勧める宗教、思想、人物はとても多い。生きていくための一種の知恵なのだろう。
だからなのか、「あの人はすごい」と頻繁に言う人は結構多い。その人は、とても素直な人で、人のことをよく見ているのかもしれない。だから、私が想像するよりも「すごい人」は結構たくさんいるのだろう。
しかし、私はこの言葉を言われるたびに、戸惑う。「あの人はすごい」と言われた時、私は何を思えばいいのだろうか。
その人と同じように、「そうだね、すごい人だね」と思えばいいのだろうか。
それとも、なぜその人が「すごい」のか、聞くべきなのだろうか。
はたまた、「そんなにすごい人なら、真似しよう、会いに行こう」と行動すればいいのだろうか。
そして、本当にその人は「すごい」のだろうか?
いや、こんな面倒くさいことを考えず、とりあえず相槌を打っておけばいいのだろうか。
私は、未だに「すごい人」という言葉がよくわからない。
「会社を成功させているから、すごい」のか、「信奉者をあつめているから、すごい」のか、「情に厚いから、すごい」のか、「面倒見が良いから、すごい」のか、「みんながすごいと感じるから、すごい」のか。
多分、いろいろな人にとって、いろいろな「すごさ」があるのだろう。いろいろな「すごさ」を理解するには、私はまだまだ未熟であり、他の人の言う「すごい人」をおそらく10分の1も理解していない。
理解していないにも関わらず、「そうだね、すごい人なんだね」と言うのは、いささか抵抗がある。また、この先その「すごさ」を理解できる自信もない。
だから、「あの人はすごい」と頻繁に言う人を、私はちょっぴり苦手なのである。