2b2484849ce2f860c5044f51bdc6a97c_s私のお付き合いしている人事の方は、人の警戒を解くのがほんとうにうまい。新卒採用でも、中途採用でも、カチカチに緊張している応募者をたちまちリラックスさせてしまう。

「リラックスした状態でないと、その人の本当に姿は見えないですよ」と、その人は言う。

たしかにそうであるが、それは言うほどカンタンなことではない。応募者との出会いは一期一会であるし、彼等は職を求めて応募してきているのだ。「緊張するな」という方がどだい無理な話である。

しかし、その方は穏やかに応募者の緊張をとく。どうやったらそのようなことができるのか。観察してみた。

 

 

1.挨拶の声は大きく。かつ一言付け加える。

部屋にはいる時、この方は大きな声で挨拶をする。声が大きい挨拶は、それだけでとてもポジティブな印象を与える。何気ない挨拶のトーン一つで、ここまで相手の表情が異なってくるのか、と感心してしまう。

しかも単に声が大きいだけではない。「こんにちは」や、「おはようございます」の後に必ず一言つけくわえている。

「今日は寒いですね。わざわざ有り難うございます。エレベーターは混んでませんでしたか?」

「オフィスの場所はすぐに分かりましたか?」

「遠くから来て頂いて、ありがとうございます。何時間くらいかかりました?」

と言った具合だ。

注意深く見ると、必ず質問を混ぜている。これで相手が会話に乗ってきてくれれば、緊張も少しほぐれるというものだ。

 

2.本題に入る前に雑談

 その方は面接に入る前に必ず雑談をしていた。内容としては他愛もないものであり、天気、近くのおいしい定食屋、就職活動や転職活動の様子など、普通であった。しかし、特筆すべきは、雑談⇒面接 の流れがあまりにも自然で、面接が「雑談の延長」のようなイメージになっていることだ。

「じゃ、そろそろ面談始めますか」という一言で、面接が始まり、「じゃまず最初に聞きたいのは…」とすぐに続ける。これで応募者は素の状態で面接に臨むことができる。

 

3.相手の気持を代弁する

例えば、「応募動機」を多くの面接では必ず聞くだろう。普通であれば

「なぜ当社に応募する気になったのですか?」

と、聞くだけである。ところがこの方は、質問の前に「相手の気持を代弁する一言」を入れる。

「転職の決意は相当のものだったと思います。今もいろいろな会社を見て、これは、と思う会社を選んでいる最中だと思いますが、なぜ当社に応募する気になったのですか?」

この「代弁」によって、面接官に対して応募者は「こちらの理解者だ」と感じるのである。これにより、応募者がさらに話しやすくなる。

 

4.自社の悪いところ、限界を正直に話す

面接官の正直な気持ちとして、「うちの会社のことをよく見せたい」と思うのは当然だろう。しかしこの方は自分の会社をよく見せようとしない。

「ウチはゲーム開発が苦手なんですけど、それはご存知ですよね。あとデザイン力も今ひとつです。ただ、ファームウェアの開発は得意なんです。今のことを踏まえた上で、うちでどのようなキャリアの望んでおられるか、お話していただけないですか?」

苦手なところや出来ないことをあえて先に言うことで、応募者に余計な期待を抱かせず、かつ応募者も正直に答える雰囲気ができる。お互いの時間を無駄にしなくて良い。

 

 

5.ごまかさない

例えば、「勤務地の希望が東京都内なんですが」と応募者から言われた時、面接官によっては、「希望を聞く場を別途設けています」と言い、ハッキリと回答しない会社もある。

また、「離職率はどのくらいですか?」と聞かれた時、「秘密ですが、高くはないです」と明言を避ける会社もある。

しかし、この方はちがう。

「東京都内という希望が通るかどうかというと、難しいと思います。」であったり、

「離職率は20%程度です。少し高いですが、反省しています。理由としては●●なので、改善策を取っていくつもりです」

と、はっきりと答える。

これにより応募者は安心感を抱くのである。

 

6.すきなだけ質問してもらう

その方は面接時間と同じくらいの長さ、質問時間を設けていた。

「むしろこちらからする質問よりも、相手から質問される方が、ほんとうの応募者の姿をつかみやすい」と、その方は仰っていた。

現場ではこんな具合である。

「では、これから質問タイムに入りますが、時間制限はしていないので、好きなだけどうぞ」

「急がなくていいので、じっくり質問を考えてください」

「あ、上着は脱いでいただいて結構です」

など、極力質問をしやすい状況を意図的に作り出している。

 

 

以上である。応募者の方々も、「良い会社かどうかを面接官の態度から見極める」ための、ひとつの材料になるのではないだろうか。

お役に立てば幸いである

 

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