4875256377_f513571cff_z学校と同じく、新卒で会社に入ると、皆、能力的には似たり寄ったりの人々が集まるものだ。「選考」というフィルタをくぐり抜けてきた人々であるから、有しているバックグラウンドも似ていることが多い。

 

それにも関わらず、仕事をして3年〜5年くらい経つと、全体の10%程度の割合で頭角を現す人がいる。彼らは大きな成果を出す。

 

ある商社の新人は、たった入社5年で子会社の立て直しの命を受け、子会社の社長に就任、赤字の会社を黒字に転換した。

ある事務機器製造業の新人は、新商品の開発プロジェクトで抜きん出た交渉力を発揮し、社内では「交渉はあいつに任せておけば大丈夫」と言われるまでになっていた。

あるシステム開発会社の若手は、入社数年で社員教育のカリキュラムを全て作成し、教育も自分で行い、会社全体の技術レベルを短期間のうちに引き上げた。

 

彼らの話は出来過ぎている、と思うだろうか?

だが、彼らは能力的にはとくに天才でもなく、入社時の実力が抜きん出ていたわけでもない。「プロとして仕事を愚直ににやろう」としただけだ。

 

 例えば、上に紹介したシステム開発会社の若手はまず考えた。

「人の嫌がることを進んでやろう。先輩の役に立とう」

彼は、だれも余計な仕事としてやりたがらなかった「新人教育のテキスト作成」を自らなのり出た。幾人かからテキストのクオリティを危惧する声が上がったが、結局代わりに手を挙げるものはだれもいなかった。

 

彼は次に考えた。

「成果にこだわろう」

彼は新人教育が何を目指すべきものなのかを考えた。昨年度までの教育のカリキュラムについて検討し、部長へヒアリングを行い、指導を仰いだ。彼は、目標は高く持つべきものと捉え、カリキュラムを分解し、全体を31の項目に分割した。

彼は目標を「今年の新人が、31項目を半年間でマスターする」ものと決めた。

 

 

彼が次にとりかかったのはカリキュラムの作成だった。彼は

「事例に学ぼう」と決めた。

彼は就業時間後に様々な会社の教育プログラムに参加し、また大量の技術書を分析し、どのステップで学習を行えば知識の吸収が最適化されるかを検証した。

web上にも大量の情報があったが、彼は「質の高い情報は本の中にある」と、十数冊の本を全て読み込んだ。

彼はまた、社内の意見を集めることにも熱心だった。上司や先輩に意見を求め、時に飲みに行くなど、彼の行うプロジェクトに手を貸してもらえるよう、手をつくした。

彼のテキストは公式、非公式にレビューされ、精度を高めた。

 

 

次に彼は

「今までにやったことのないことを少しは取り入れよう」と決めた。

それまで社内教育は講師が教え、新人が問題を解くスタイルで行っていたが、一部に「反転学習」を取り入れた。すなわちカリキュラムの動画を予め見てくるように指示し、現場では実習のみを行った。

アンケートを取り、満足度を調査し、最適な学習スタイルへ調節を行った。

 

 

最後に彼は

「教育を受ける人たちを動機づけしよう」と決めた。

 そのために、彼は高く夢を掲げた。

「我々は31項目を半年間でやりきらないとだめです。苦しい道だけど、これは通常のカリキュラムの1.5倍のスピードに当たります。でも、私の言うとおりにきちんとこなせば、絶対に一人前のエンジニアになれます。それを目指しませんか」

新人たちは高い目標に鼓舞され、全員がカリキュラムの最終テストをパスした。

 

 

彼は天才だったか?おそらくそうではない。

ずば抜けて明晰だったか?おそらくそうではない。

彼は主体的に考え、当たり前のことを確実に実行しただけだ。

 

実際、仕事は奇抜なアイデアを出す人ではなく、きちんと考え、愚直に手を動かすひとが成果を出す。それだけの話だ。

 

 

 

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Riccardo Cuppini