数日前に、有吉弘行とマツコ・デラックスが、「ネット番組がつまらないワケ」という内容の番組を放送したとのこと。テレビがネットを批判するのはこれが初めてではないが、なにか「テレビ芸人の焦り」を感じるような趣旨なので、記事を読んでみた。
内容は一言でまとめると「ネットは低俗なもので、テレビの方が優れている」といった、どちらかと言えば感情的な内容だ。
さて、何かとネットとの対立が煽られており、「つまらなくなった」であるとか、「テレビなんか見ない」と揶揄されるテレビだが、本当のところはどうなっているのか。テレビは本当に衰退しているのか。
まず「視聴時間」に関してだが、総務省のページを見ると、「テレビの視聴時間はここ数年あまり変わっていない」と言える。
「テレビ見なくなった」と言うが、実際にはそんなに変わっていないようにも見える。
一方で、「ネットでの」調査では、78%の人がテレビの視聴時間「減っている」と回答している。まあ、ネットユーザーに聞けばこういう結果になるだろうが、サンプルのとり方が偏っているため世間全体のデータとしては上の総務省が出しているデータのほうが信頼が置けるだろう。
しかし、「火のないところに煙は立たない」というように、「テレビ見なくなった」と言う人が増えた背景には何かあるはずである。そう思って調べると、NHKが面白い調査を出している。
年層による差がさらに広がるテレビ視聴(NHK放送文化研究所)
調査によれば、
”男女年層別では若年層,特に女性の視聴時間量が短くなっている。女20代は2000*年3時間1分 から2010*年2時間13分と48分,女30代は2000*年4時間2分から2010*年3時間18分と44分も短くなっている。女13 ~ 19歳は2010*年は1時間44分と2時間を割り込んだ。(中略)これに対して、男女70歳以上では視聴時間量が増え,男70歳以上は2010*年5時間57分と,6時間に届くほど長時間視聴している”
”視聴時間量は若年層で減少しているにもかかわらず,全体では3時間半を超える長時間視聴が続いている大きな理由に,高年層人口の増加がある。”
という見解を述べている。おそらくこれが「テレビ離れ」の真実だろう。要は、テレビは「若者が利用せず、お年寄りが利用するメディア」ということだ。今の傾向が暫く続くとすれば、テレビの衰退は避けられない。今の若者達が社会の主流派となる10年後~20年後には、テレビ局は今の姿をとどめていないかもしれない。
Facebookも最近、「若者の利用が減っている」というデータを公開し、株価に影響がでている。若者の取りこぼしは、将来にわたって業績に非常に大きな影響があるとみられているからだ。
「テレビはクールではない」という声は、「若者をつかめていない」という事実に照らしてみればそれなりに的を射ている。
かつて鉄道が黎明期だった頃、イギリスやアメリカには地方も含めると、数多くの鉄道会社が存在した。そこに勤めることは皆の憧れ。権力の証だった。
しかし鉄道から自動車へと移動・輸送手段の主役が移ると、鉄道会社は次々と倒産し、合従連衡の末に国営化、あるいは数社へと数を減らすという途をたどった。
テレビ局も同じかもしれない。10年後にはNHKは国有化、民法は地方局と統合され、キー局同士も合併、TV局の社員は大幅に削減され・・・、というシナリオも有り得なくない。