3月決算の会社からすれば、4月は新しい期の始まりである。そして、新しい期が始まるとともに、「新しい目標が立てられる」という方が多いのではないだろうか。
しかし、新しい目標は多くの会社員にとって頭痛の種だ。特に「高すぎる目標」については毎度のことながら不毛な議論が巻き起こる。
高すぎる目標が設定されるメカニズムは、以前にも紹介したが、次のようなものである。
1.各個人に全体の目標が分割して配分される
2.ところが人によっては目標が高すぎたり、低すぎたりする
3.能力が低い人は、諦めてしまって達成率が50%~70%程度となってしまう
4.能力の高い人は、目標を達成すると手を抜いてそれ以上の数字を獲得しようとしない。(もちろん例外もあるが)
5.合算しても会社全体が目標を達成できない
6.次期には、会社は必要な売上や利益を得るためのセーフティーとして、真に必要な数字よりも多めの数字を社員に伝えるようになる
7.ますます目標が高くなる
実際、このような状況の会社は非常に多い。具体的な事例をあげよう。
目標設定時、ほんとうに必要な利益額、売上額は、社員から隠しておく。
社員へはそれよりもかなり高い目標を知らせ、期中は社員を高い目標で精一杯走らせる。当然、期末に会社全体の目標には届かない。社員へ目標未達のペナルティを与える。しかし、密かに持っていた「ほんとうに必要な利益額、売上額」は達成する。
この行為は正しいだろうか?
「高い目標を与えなければ社員は頑張らないから、当然だ」という意見もある。
「高すぎる目標を達成できない社員にとって、フェアではないやり方だ」という意見もある。
もちろん、どちらも正しい。しかし確実にわかることは、
「そういった行為を続けると、社員は疲弊する」ということだ。毎年毎年、達成できるかどうかわからないぎりぎりの目標にチャレンジする、と言うのはアスリートであればともかく、普通の人にとっては5年もやり続ければ当然のことながら疲れが出てくる。
そうして、殆どの人は「この先もずっとこうなのだろうか」「年をとってもこういう働き方なのだろうか」という悩みを抱え、場合によっては退職を決意することもある。
仕事をする、という行為は「マラソン」に似ている。常に走り続けながらも時に休息し、時にスパートする。肝心なのはペース配分だ。
毎年毎年高すぎる目標に向かう、という状況はどちらかと言えば「短距離走」にあたる。これでは長期間にわたって働き続けることはできない。
企業にはいい時も悪い時もある。長期間にわたって存続することを前提とするのであれば、「ペース配分」を考えることはとても大事だ。
あなたの会社は、「ペース配分」を考えているだろうか。それとも「短距離走」を繰り返している会社だろうか。
どちらで働くも、自分の考え方ひとつである。