「やる気」の源泉はなにか、それをコントロールすることで、皆多くのものを獲得できるとわかっている。だから、とくに学生と中堅社員の方々から、「やる気を出すにはどうすればいいですか?」と聞かれる。
巷にやる気に対するライフハックはたくさんあるが、それは皆やる気で悩んでいる証拠なのだろう。
だが、「やる気のコントロールがうまい人」は、驚くほど簡単にやる気を出している。だが「やる気のコントロールが苦手な人」と何が違うのだろうか。
私はある外資系金融機関に務めるやり手の知人に、「やる気」について尋ねたことがある。彼ほど行動力のある人間は、見たことがなかったからだ。
すると面白い答えが返ってきた。
「おそらく、やる気のコントロールが上手い人ほど、逆説的ですが「やる気は本質的にコントロール不可能」という認識をもっていると思います。」
「…意外ですね」と私が言うと、彼は答えた。
「やる気をコントロールしようなんて、絶対に思っちゃダメです。まさしく当たり構わず無謀な戦いを挑む、ドン・キホーテです」
「なるほど」
「何かで読みましたが、脳科学的にはやる気はとりかからないと出ない、という話らしいです。その話にかなり実感があります。やり出さないと、やる気にならない。多分真理です。
だから、私は「とりかからざるをえない状況」を作り出すことに全力をあげることにしています。」
彼によれば、例えば以下のような状況では「やらざるを得ない」ので、やる気が出るという。
・(外で)他にやることがない(ので、やる)
・(カフェで)金銭的な支払いを伴う(ので、もったいないからやる)
・(図書館で)みんなが何かしている(ので、周りの雰囲気に流されてやる)
・(言われた)締め切りが迫っていて怖い(ので、やらざるを得ない)
・(稼がないと)生活が破綻するので怖い(ので、やらざるを得ない)
「「熱意」といったあてにならない要素よりも、周りの環境を変えてしまうほうが、明らかに効果が高いとおもいます。
私だって、家に帰ってしまったら、寝てしまったり漫画を読んでしまいます。仕事なんてできません。」
と彼は言った。
人間は本能的に「楽であること」を好む。もちろんこれは生物として省エネであるほうが生存する可能性が高いからだろう。
だから、本能に頼ってやる気を出すことはできない。これは「精神的強さ」とは異なる話である。
したがって「いかに自分を死地に追い込むか」という工夫が、功を奏する。もっといえば、自分にとって快適な、気持ちのよい環境ではなく、「自分にとってネガティブな環境」を作り出すことで、やる気は出るのである。
だから、「起業したいのですが、どうも自信がありません」という方には「起業してから考えればよい」が一番効果的なアドバイスになる。
起業すれば、だれでもある程度頑張れるし、頑張ることができれば自信もつく。確かに私は、起業してから別人のように働くようになった知人を何人も知っている。
「人間は、追い込まれないと必死になりません」と彼は言ったが、やる気のコントロール技術は「自分を追い込む技術」なのだ。
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