吉野家が5月、客数が30%伸びて、売上が前年対比16%の伸びと報道された。それだけ見れば「吉野家頑張った」というように見えるが、競合のすき家は、9%マイナス。さらに、松屋も8%程度売上が落ちている。
したがって、吉野家の売上が16%伸びた分は、牛丼を値下げしたことですき家と松屋から流れた顧客の影響、ということで辻褄が合いそうだ。
ただ、ちょっと考えると結局のところ、「牛丼を食べる人の数はそれほど変わっていない」ということだ。ちょっと値下げしただけで、顧客の3割が他店から流れてくる、というのはどう考えても良い商売とはいえない。
牛丼好きの人からすれば純粋にありがたい話なのかもしれないが、結局値下げをすることで、何処かにはしわ寄せが来ているはずだ。業績を見ても、営業利益を見てみればジリ貧であることがよく分かる。
彼らもそのことは十分わかっているのだろう。「夏はうな丼」というキャンペーンを張り、客単価を上げようとしていることがウェブサイトを見てもよく分かる。が、おそらく業績に大きく貢献することはないように思える。
マクドナルドが不調であることもまた、原因は同じかもしれない。要は「食べてみたい」と思わせるメニューが開発されていないのである。
先日、ある外食産業の方とお会いして、話を聞いた。その会社は全国にビュッフェスタイルの店舗を展開しており、業績が非常に好調なのだが、印象的なことを仰っていた。
「安達さん、ビュッフェスタイルのレストランは、業績が落ちた時メニューを変えるんです。どう変えると思います?」
「価格を下げたり、品数を減らしたりして、耐えるんでしょうか?」
「実は逆なんですよ、業績が落ちたら、品数を増やさなければ絶対に業績は上向きません。悪くなったら、攻めなきゃダメなんです。要は、パッと見て「このビュッフェは違う」と思ってもらわなきゃダメなんです。」
もちろん、吉野家やマクドナルドが同じような施策をとれるとは限らない。しかし、攻めているようにも見えない。ゼロサムゲームは業界をどこへ運んでいくのだろうか。