以前に「テレビは衰退しているのか?」という記事を書いた。結論として、NHKの調査したデータからは、
「若者はテレビを見なくなったが、老人はテレビをより見るようになった。結果としてテレビの総視聴者数は横ばいである」
という現状が見える。
ただし、「若者が見なくなった」というのはあまりよい傾向とはいえない。将来のユーザが確実に減っていくからだ。
だから、現在テレビ局や制作会社の中には、「何とかしなければならない」という危機感をお持ちの方も多いだろう。
そういった現状から、業界の中で「テレビでしか出来ないこと」を追求する人が出てくるのは当然だろう。
「ブラタモリ」の作り方〜いま、テレビでなければできないこと(lifehacker)
番組のプロデューサーは「テレビでしか出来ないこと」についてこう言っている。
”おもしろい人や新しい人を探していく取材能力とか、ソフトを作る力だと思います。
いまは素人さんでも、動画投稿サイトを使えばポンと世界に発信できますよね。それに対してテレビが勝てる部分は、「どうやって探して、どうやって調べて、どう番組にしていくか」のノウハウだと思うんです。そこが一発勝負の面白映像の動画投稿サイトとは違うところ。
そうした映像が捕らえるのは素人の方でなければできない瞬間で、それはそれでおもしろいと思います。ところが、ある程度の時間をかけて取材してまとめる力は、まだテレビの世界の人の方が強いはずだと僕は思っているんです。
つまり動画投稿サイトでできないことのなかに、テレビがやらなきゃいけないことがある気がするんです。”
こういった話はよく耳にする。「ソフトを作る力」や、「素人には出来ないことがある」というテレビの優位性についての話だ。
しかし、失礼ながらこの話は少し的はずれではないかと思う。いかに時間をかけて、大金を投じて番組を作ったとしても、番組の面白さとしては「素人のちょっとしたアイデア」に負けてしまうことも多い。
webの最も強いところは、「製作者が膨大な数存在する」ことだ。膨大なゴミコンテンツの中にほんの僅かの確率で良い物がある。そして検索エンジンやソーシャルメディアはそれを見つけ、広めることができる。
したがって、webで見ることのできる「面白いもの」は、過酷な競争を勝ち抜いてきたコンテンツだ。「ポンと発信しただけのもの」ではない。
では、テレビしかできないこととは何か。
思うに、テレビがwebに比べて圧倒的に優れているのは、まず「画面の大きさ」である。PCでもスマートフォンでも、ハードウェアの制約が有り、大画面は難しい。そして、大画面でコンテンツを試聴するるメリットはそれなりにある。
1.旅、ドラマ、映画など、「きれいな映像」「音響効果」を含んだコンテンツを見ようとすれば大画面の方が良い
2.教育・教養、ディスカッション、問題提起など、家族・複数人で見る方が面白いものであれば、大画面のほうが良い
次に優れているのが「操作の簡単さ」である。デジタル機器に不慣れな層はテレビを好む。また、そういった人々はローカル情報を好む。実際、「マスメディア」よりも「ローカルメディア」に特化したほうがうまくいくだろう。
1,健康情報、薬、保険などの年配向け情報
2.地域の情報発信力がない人々の特集、地域内で使われるローカル情報
このように考えていけば、まだまだテレビの利用法にも可能性はある。
時代とともに扱うコンテンツを変えていくことが、テレビ関係者に求められているではないかと思う。