「孫子」とは、紀元前500年頃、孫武という人物によって書かれた兵法書の名である。この本が2500年を経た現在でも読み継がれる理由は、この本が戦争を分析した最も古い書物の一つであったことのみならず、内容が非常に実践的だからである。
「兵法書」と銘打ってはいるが、その内容は非常に広範囲に及び、13篇の内容は「戦闘」よりも、むしろ「戦略」「戦術」に重きが置かれている。
- 計篇 – 序論。戦争を決断する以前に考慮すべき事柄について述べる。
- 作戦篇 – 戦争準備計画について述べる。
- 謀攻篇 – 実際の戦闘に拠らずして、勝利を収める方法について述べる。
- 形篇 – 攻撃と守備それぞれの態勢について述べる。
- 勢篇 – 上述の態勢から生じる軍勢の勢いについて述べる。
- 虚実篇 – 戦争においていかに主導性を発揮するかについて述べる。
- 軍争篇 – 敵軍の機先を如何に制するかについて述べる。
- 九変篇 – 戦局の変化に臨機応変に対応するための9つの手立てについて述べる。
- 行軍篇 – 軍を進める上での注意事項について述べる。
- 地形篇 – 地形によって戦術を変更することを説く。
- 九地篇 – 9種類の地勢について説明し、それに応じた戦術を説く。
- 火攻篇 – 火攻め戦術について述べる。
- 用間篇 – 「間」とは間諜を指す。すなわちスパイ。敵情偵察の重要性を説く。
出典:Wikipedia
面白いのは、「戦争の技術」として書かれた本が、現在では「ビジネス書」としても十分使えるという点だ。
例えば、謀攻篇に、「夫れ将は国の輔なり」から始まる一文がある。すなわち、将軍とは国家の助け役であるという意味だ。
君主を社長と読み替え、将軍は中間管理職、軍隊を社員と読みかえれば、「中間管理職」と「社長」、「社員」の関係について孫武はこう述べる。
”管理職が社長と親密であれば、会社は必ず強くなるが、管理職と社長に隙があるのでは、会社は必ず弱くなる。そこで、社長がやってはいけないことは3つだ”
その3つとは何か。
1.社長が現場をよくわかっていないのに、現場に口出しをすること
(軍の進むべからざるを知らずして、これに進めと言い、軍の退くべからざるを知らずして、これに退けという)
2.ルールを画一的にして社員を動かすこと
(三軍の事を知らずして、三軍の政を同じうすれば、則ち軍士惑う)
3.全員に同じ目標を与えること
(三軍の権を知らずして、三軍の任を同じうすれば、則ち軍士疑う)
2500年前から、組織というものはあまり変わっていないのだ、と実感する読み物だ。