「好きなことを仕事にできるのは、素晴らしいことだ」と、多くの人は考えている。
もちろん例外もいるだろうが、数多くの会社を見て、年齢にかかわりなく、地位にかかわりなく、皆「好きなことを仕事にできている人」を羨ましく思っている。
だが、「実際に自分がそうするか」、「自分の子どもや、友人に勧めるか」ということについては、意見の別れるところである。
「好きなことでも、仕事にすると嫌いになるよ」
「趣味にとどめておくほうがいいよ、食べていけないよ」
「現実は厳しいよ。ギャップがあるよ」
そういった否定的な見方をする人もまた多い。いや、多いどころではない。実際本当に「好きなことを仕事にしている」人は、極めて少数だ。実際、内閣府の調査においても、仕事は第一に「食べていくため」であり、「自分の夢や希望のため」としている人は15%程度にすぎない。
このギャップが、「好きなことを仕事にする」についてのほとんどの見方である、「やりたいけど、現実的にはムリ」という意見を形成していると考える。
「好きなこと、やりたいこと」を仕事にするのは、一部の才能にあふれた人や起業家の特権、と述べる人も少なくない。
もちろん私もかつてはそう考えていた。
しかし、実際に世の中で「好きなことを仕事にしている」様々な方からいくつかの知恵を授けていただき、私は「好きなことを仕事にする」の一歩を踏み出すことを決意できた。
そういった諸々の話から個人的に思うのは、「好きなことを仕事にする」ことは誰だって可能だ。でも、自分がいくつかの条件に当てはまるかどうかをチェックし、その上で決断することが重要、ということだ。
その「条件」をご紹介したいと思う。
好きなことを仕事にするための条件
1.自分を信じている
自分を信じられない人には、「好きなことを仕事にする」は、おすすめできない。いくら好きなことであっても、必ず不愉快な出来事は起きる。その時に自分の決断自体を疑ってしまったり、「才能がない」と諦めてしまったりするようではダメである。
自分ならば信念をもって忠実にやるべきことをやれる、と信じている人は「好きなことを仕事にする」ことで、幸福が得られるだろう。
2.生活出来るだけの収入のアテや、蓄えがある。
「好きなことを仕事にする」ことと、「好きなことで稼げる」は、別の話である。生活に困窮すれば、好きなことも嫌いになってしまうかもしれない。家族のある人は家族を養うという別の責任もある。好きなことのためとはいえ、家族を失ってまでやる価値のあることは少ない。
「好きなことで稼げる」ようになるためには、場合によってはかなりの時間がかかる。好きなことをするためにも、お金は必要だ。殆どの人は最初に、「好きなことを副業としながら、本業で生活費を稼ぐ」ことになるだろう。
もちろん、好きなことをすること=収入が保証されている仕事につくこと であれば、迷うことはないのだが。
3.「好き」は、金銭的な成功を保証したりはしない、ということを認識している
好きなことをやるほうが、嫌いなことをやるよりは成功の可能性は高い。が、それはあくまで努力の継続性についての話であって、金銭的な成功を保証したりはしない。
金銭的な成功は純粋にマーケットに依存するのであり、本人の好き嫌いとは関係がない。時には、マーケットに対して迎合し、金銭を稼ぐ必要もある。それを覚悟のうえであれば、好きなことをやり続けることにためらう必要はない。
4.「あこがれの仕事に就く」と、「好きなことを仕事にする」は、全く違うということを認識している
ひとくくりにされがちだが、この2者は全く異なる概念である。「あこがれの仕事」とは、中身を知らない仕事、「好きな仕事」とは、中身を知っている仕事である。
「あこがれ」の状態で大きな決断をするのは危険であり、小さくでも良いので実際に自分でやってみて、それから判断するべきだ。例えば、ゲームデザイナーになりたいのなら、自分でゲームを作って公開し、フィードバックをもらってから決めることが良い。
5.積み上げる過程そのものを楽しめる。
「好きなことを仕事にする」の本質は、「結果が出るまでの積み上げの過程を楽しむ」ことにある。
例えばRPG(ロール・プレイング・ゲーム)をやる時に、多くの人は「ゲームクリア」が目的ではなく、「ゲームの過程で、旅をしたり、キャラを強くしたりする」が目的なのと同じだ。最初から最強の装備で、最強のパラメータのキャラクターが使えて、いきなりラストダンジョン、では全く面白くない。
キャラを育てあげ、パーティーを考え、装備を整える。それが楽しいのだ。
「好きなことを仕事にする」はRPGに近い。「自分が成長する過程、色々な人々と出会う過程、お金を手に入れる過程」が楽しいのである。
以上の項目が、「ピンときた」なら、「好きなことを仕事にする」を迷わずお勧めしたい。
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