渋沢栄一「論語」の読み方渋沢栄一という幕末の英雄がいる。と言っても彼は刀や銃を持って派手な立ち回りをしていたわけではなく、経済的な分野で活躍した人物だ。

彼が創設した企業や組織は現在にも残るものがおおく、みずほ銀行、東京ガス、共同通信、東京海上日動火災保険、理化学研究所、東京証券取引所、帝国ホテルなど錚々たる面々である。

また、ピーター・ドラッカーが認める数少ない「偉大な日本人」のひとりであり、彼の著作には渋沢栄一が登場している。

 

そんな人物だが、彼は大変な実務家であり、その実務の中で得られた知見を著作としても残している。

おそらく、最も有名な著作が、「論語と算盤」という作品だ。

 

 

これは今でも十分通用する考え方であり、「正しさと利益」をどう両立するかという、企業にとって重要な問いに答える知見を与えてくれる秀作である。

 

 

しかし、これよりも読み物として面白いのが、渋沢栄一の「論語の読み方」という本である。

個人的には、これは現代で言う「ライフハック本」のようなイメージであり、ライトで読みやすい。例えば、次のような話がある。

 

”目先の利益より”余得”の方が大きな利益を生む

私はどんな事業を起こすにあたっても、またどんな事業に関係するときでも、利益本位には考えない。この事業こそは起こさねばならない、この事業こそは盛んにしなければならないと決めれば、

これを起こし、これに関与し、あるいはその株式を所有することにする。

私はいつでも事業に対する時には、まず道義上から起こすべき事業であるか盛んにすべき事業であるかどうかを考え、損得は2の次に考えている。”

 

 

そして、この中で「月給を上げる秘訣」というコンテンツが有る。

 

”孔子流の”月給”を確実に上げる秘訣

自らを修養して実力を充実せよ。その修養の方法は、

多くを聞いて広く道理を知っても、自分で確信できないことはひかえて、間違いないと信ずることだけを人に語るようにし、

多くを見て広く物事を知っても、大丈夫と思えない行為はやめて、道義に反しないと確信できることだけを行えば、

とがめられることなく、また自ら後悔することもない。

こうして言動に悔いがなければ、世間の評判もよく、長上にも知られ、自分から売り込まなくても必ず登用される。そうすれば給料は自然についてくる。”

 

私はこれを見て、妙な納得感があった。

2500年前からまったく同じことが語り継がれてきたのだ。多分真理に違いない。そして渋沢栄一も同じことを感じたのだ。信じてよい。

「稼ぎは、自然についてくる」のである。