電車の中で、変な広告を見た。
キャッチコピーが気になったのだ。
(画像出典:http://ahrwin.com/)
この文章、日本語としてはおかしい(気がする)。「でも」と言うのは、その前と後で逆の事を言うので、この文脈からは使えない。
通常であれば
幸せというのは、その人の考え方ひとつです。
だから、あなたは(考え方を変えて)幸せになりましょうね。
が正しい使い方だろう。
しかし、このコピーは「でも」を使っている。従って、このキャッチコピーには意図的に隠されている文章がある。推測するに、
幸せというのは、その人の考え方ひとつです。
でもあなたは、(出来ませんよね。だからうちの会社のサービスを使って)幸せになりましょうね。
太字の部分が、隠された文章だ。
実は、このコピーは、ぱっと見のコピーの印象とは正反対に、「幸せというのは、その人の考え方ひとつです。」を実行するのは大変難しい、と言っているのだ。
「自分を変えよ」という思想は、古くからある。
シェイクスピアは、「ものの良し悪しは、考え方ひとつで決まる」と言った。儒教の始祖、孔子も同様の趣旨の発言をしている。
だが、多くの人の間でこの類の美徳が一般的になったことは、おそらく歴史上、一度もない。
上司が、「お前が変わらなくてはいけない」と部下に述べることはよくある。
参考:会社に不満があるなら、まず自分を変えなさい、は本当か(Books & Apps)
しかし、上にも述べたように、多くの人はそれが出来ない。
ということは、マネジメントは「それが出来ないこと」をある程度前提としなければ成り立たない、ということでもある。
個人的には、「考え方を変えることができる」と言うのは、一種の希少な能力だと考える。
「才能」と言ってもいいかもしれない。
だから、普通の人に「考え方を変えろ」と言うのは、ろくに陸上競技をやったこともない人に、「100メートルを10秒台で走れ」と言っているのと同じ、という認識だ。
価値観の合わない組織で働くことは社員にとって辛いことだ。ピーター・ドラッカーはこう指摘する。
組織には価値観がある。そこに働くものにも価値観がある。組織において成果をあげるためには、働くものの価値観が組織の価値観になじまなければならない。同一である必要はない。だが、共存できなければならない。さもなければ、心楽しまず、成果もあがらない。
(プロフェッショナルの条件)
おそらく、トップと価値観があわず、我慢もできないようであらばさっさと辞めるのが正解だろう。
そして、会社もそれを望んでいるはずだ。
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