じゃいつやるか?今でしょ!がブレイクした。予備校の講師がこのようにネタとなるのは珍しいことではないが、学生だけではなく、どのような年代の人にも汎用的に受け入れられる一言だったのだろう。
「はじめてみようか、どうしようか」と、迷っている人に「やってみなけりゃわからないよ」という人や、会社においても「とりあえずやってみよう」という人は多い。
会社においてチャレンジ精神が評価されるのは良いことだと思うし、「やってみて後悔することよりも、やらなかったことに対する後悔の念のほうが大きい」、というようなまことしやかな説もあるので、個人的には、確かに「まあ、やってみればいいじゃないか」と思うことも多い。
でも、新しいことを始めるためには一つ、かならず必要なことがある。ジョギングでも、英会話でも、新しい会社に勤めることも、どれも同じだ。
それは何か。「今までやっていたことをやめる」ことである。
人間に与えられた時間は有限だ。やりたいことをすべてできるわけではない。
例えば、ジョギングを朝早くやろうとしたら、夜早く寝なくてはいけない。したがって、見たいテレビを我慢しなければいけない、夜遅くまで飲みに行くことをやめなければいけない。
英会話を上達させようとしたら、電車の中でゲームをやるのをやめて、英会話の教材を聞かないといけない。
新しい仕事をやりたいと思ったら、今の会社を辞めなければいけない。
「継続は力なり」という。しかし、毎日大した収穫もなしにただ継続するだけであれば、時間を無駄遣いしていると言えるだろう。
「継続は力なり」が正しいのは、自分のやっていることが「正しい努力」である限りにおいてだ。
従って、「いつやるか?今でしょ!」の前に考えなくてはいけないのは、「いつやめるか?今でしょ!」である。
しかし、「本当にやめていいのか?」「今の努力は本当にムダなのか?」を見極めるのは難しい。
タバコや暴飲暴食などの悪癖については「ヤメる」と意思決定することはそれほど難しくない。(継続できるかどうかは別の問題としてあるが)
しかし、「弁護士を目指して勉強」や、「今の職」、「新規事業の立ち上げ」、「会社の取り組み、ルール」など、ヤメ時を見極めるのが極めて難しいこともたくさんある。
特に、利害関係者が多い「新規事業」や「会社のルール」などは、ヤメ時を決められず、意味のない行為をズルズルと続けてしまうことも多いのではないだろうか。
では「ヤメ時」を見極めるためにはどうするか。
当たり前とされている事項だが、重要なのは以下である。
- 始める前に、「成果の定義」を行う
- 「成果をあげるまでの期限」を決める
- 期限までに成果が上がらない場合、一度リセットして成果の定義、やり方を見直す、もしくはヤメる
- その際、自分の価値観と合致するかどうかも判断する。
注意点として、「自分が成長している実感が無い」や「面白くない」をヤメる条件に入れてはいけないということである。
多くの場合「自己成長」というものは実感を伴わない。実感が伴うのは最初だけ、あとは遅かれ早かれひたすら地味な努力を続けるだけである。また、「面白い」もまた、判断基準とはならない。「面白さ」は、その時その時の気分や成果の状況に左右されやすい。
これらは、成果が上がるかどうかの判断基準にはならないのである。
その代わり、「価値観」は大切である。
「リーダーたる者は、あらゆる行動において、翌朝鏡の中に見たい自分であるかを考えることを習慣化しなければならない。」
「知りながら害をなすな」
「自分の価値観に反するところに身を置くならば、人は自らを疑い、自らを軽く見るようになる」
成果が上がれば何をしても良い、という事にはならない。また、「自分がやりたくないと強く思うこと」も長続きしない。
ヤメ時はデジタルな判断基準と、自分の価値観にもとづいて決めればいいのではないかと思うのだが、どうだろうか。