5142756543_3ea0d68a6e_zこんな話を聞いた。ある営業部での話だ。

その営業部ではテレアポにより受注を獲得することが一般的だった。電話をかけ、手紙を書き、顧客を開拓する。皆、一生懸命やっていたが、一人だけ成果の上がらない若手がいた。

上司があまり振るわない若手に、「成果が出るように努力してください」と、部下にいうと、「努力したから成果が出るわけじゃないです」と反論された。

部下は続けてこう言った。

「僕は無駄なことはしたくありません。結果の出る効率のよい方法でやりたいんです。」

 

上司はそれを聞き、その部下に言った。

「教えた通りにやればいい。うちのやり方は知っているだろう。」

部下は言った。

「でも、あのやり方はとても非効率です。」

上司は「つべこべ言うな、やることをやってから主張しろ」と、その部下を叱りつけたが、上司はそのやり方が非効率であることも知っていた。

昔は電話一本で仕事がとれたが、最近は競合が増え、そんなにカンタンに仕事をもらうことはできなくなっている。確かにこの状態は、問題だった。

 

そこで、その上司はその部下に言った。「効率のよいやり方のアイデアはあるか」と聞くと、彼は「取引が切れてしまった顧客の名簿と、webサイトを改良する許可が欲しい」という。

上司は半信半疑で彼にその権限を与えたところ、彼はその名簿とwebサイトを使い、テレアポを一件も行わずに月間の成績1位を獲得してしまった。

 

成果が出てよかった…で済めば良いのだが、そうはいかなかった。

怒ったのは周りの営業である。「なぜ、あいつにだけ特別に情報を与えたのか。」と、上司は詰め寄られた。部下たちは「不公平じゃないですか。あいつだけ楽に仕事できるなんて」という。

そこで上司は「名簿と、webサイトを使ったやり方を、他の営業に伝えるように」と、彼に伝えたが、彼は「私が考えたやり方なのだから、見返りなしには渡せません。」という。

 

困った上司は、社長に裁定を依頼した。社長は「情報を、一部の社員が独占するのは許可できない」と言い、彼は名簿を独占する権利を失った。

彼にはわずかばかりの賞与が支給されたが、彼は「バカバカしい」と言って、会社を去った。

 

さて、彼と上司、社長の裁定、誰が間違っていたのだろうか?

それとも、誰も間違っておらず、これが日本の会社のあり方なのだろうか。

 

 

 

 

 

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(Photo:Henry Schimke)