大学生の大学八月第一週、私は就職活動を終えた。

結果としては無事に第一志望企業群の企業から複数内定を頂くことが出来て、その中から進路を選ぶことができた。

 

正直なところ、就職活動が始まるまではこんな結果になるとは思いもよらなかった。

 

実際、私自身は、巷で就活強者と言われるような、体育会系、長期留学経験者、帰国子女、名門ゼミなど華やかな経歴は持ち合わせていない。学生時代頑張ったことは予備校でのアルバイトという、いたって普通の大学生、いやむしろ学業不振で一年間留年してしまい、もしかしたら劣等生とも言えるかもしれない。

 

内定者の集いに行ってみると、やはり華やかな経歴を持つ学生が多かった。

 

「スポーツで全国優勝しました!」

「大学の首席です!」

「ミスコン出場者です!」

 

自分自身、こういうことをやってきました、ということを堂々と言え、しかもそれが非常にわかりやすくレベルの高い人が非常に多い印象を受けた。唯一他者より優れていると就活中に感じていた、対話力もほかの内定者は非常に高いレベルで、何故自分自身がここにいるのだろうか、という疑問さえ頭によぎった。私は、そんな疑問を人事担当者の方にぶつけてみた。 

 

「なんで僕は内定をもらえたんですか??」

「簡単だよ。うちの会社で働くイメージがついたからだよ。」

「それって雰囲気がマッチしてたとか、うちの会社にいそうとか、そういうことですか?」

「それももちろんそうだよ。けどね、それ以上に働くっていうことを自分なりに定義出来ていて、それがうちの考えている働き方とマッチしていたんだよね。本当は持っててほしいんだけど、そんなに多くの大学生が持ってる感覚じゃないから、君には期待しているよ。」

 

「なるほど…」

私自身、先に書いたように予備校でのアルバイト漬けの大学生活であった。

生徒の大学受験という人生の転換点に携わり、指導していた生徒が合格した時にはまるで自分事のように喜び、生徒が不運にも不合格してしまった時には共に泣いた時もあった。非常にやりがいを感じていた一方で、上から結果に対して詰められることも多く「なんでアルバイトなのに、こんなつらい思いをしなければいけないんだろうか。」であるとか、「もっと楽なバイト探そうかな…」と思ったことも正直なところ、多くあった。

 

そんなとき、自分自身を大きく変える出来事があった。自分自身が対応をして入学した生徒が志望校に合格した時である。

 

「先生のおかげで受かりました!」

 

保護者の方、生徒両方に感謝された。私自身もほかの生徒に感謝される以上に感慨深くなっていた。

 

その時私自身は初めて感じた。「働くってこういうことなのかな…」と。

その生徒を入学させた時のことは今も忘れない。大学二年生の時、突然の来訪で社員が対応できなかった生徒と面談をした。保護者も交えた面談ということがあって、正直面倒な役回りが回って来たな、と感じた。結果としては運よくその生徒は入学することになった。

子供の人生の分岐点と言っても過言でない大学受験を乗り越えるために、安くない授業料を支払っていただく。クレジットカードを受け取り、緊張で手を震えさせながらも、カードを切ったことは今でも昨日のことのように覚えている。

 

お金という対価を頂いて顧客に貢献すること

もっと言えば、お金を頂く代わりに、サービスやモノを提供することで、顧客を幸せにしていくこと 

自分の中でそんな風に働いていきたいなとも思ったし、こんな体験を社会に出たらもっとたくさんできるのか、とわくわくした記憶すらもある。

そんな私はそこから更にどっぷりつかり、多くの顧客から感謝されると同時に自分自身が更に成長していく感覚に形容しがたい満足感を得た。

 

巷であふれる、ビジネス書、経営者の格言等にも同様のことがたくさん書いてある。それまでは「とかいうけど所詮綺麗ごとだろ。」と思っていた節も多々あり、社会人としてはある程度当たり前と思われるような感覚が、正直言ってピントも来ていなかった。しかしながら、その経験を通して、他の大学生よりは自分の中にすっと落とし込まれたような気がしている。曲がりなりにも営業という経験をしたからこそ、芽生えてきたのだとも思う。

 

自分自身の力で顧客にサービスを提供し、その対価を頂く、そんな自分なりの働くという行為は就職活動前の早い段階で経験しておいてよかったな、と感じる一方、そういった視点を持って企業の採用担当、人事は見ているのだな、とも感じた。

(了)

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