社会人の方々に、働き方や仕事観に関して話を伺う【仕事のチカラ】。第三回は独立してwebエンジニアとして活躍する、薄田さんにお話をうかがいました。
−今はどんな仕事をしているのですか?
今は、殆どの仕事がwebサイトの制作です。おそらく仕事の95%以上を占めます。webサイトの制作にはエンジニアと、デザイナー、企画などの人々が必要なのですが、このうちエンジニアが私の領分です。デザインや企画は、行っていません。
−どんなサイトを作ってきたのですか?
業界関係なくやってます。例えば品川駅南地域の未来をつくる推進協議会という団体の仕事を請けたり、リエゾンという結婚指輪のサイトを作ったり。ここはJavascriptでページをめくっているようなサイトを作りました。
あとは…中華街の状元樓という中国料理のお店のページを作ったりしました。独立して5年間で、おそらく40サイト以上作っていると思います。
−ずっと一人でやってこられたのですか?
そうですね、たまに人の手を借りることも有りましたが、エンジニアとしては、ほぼ一人でやってきました。まあでもwebシステムですから、一人で作る、というのは普通ではないかと思います。
−なるほど、なぜエンジニアになろうと思ったのですか?
正直に言えば、大した理由じゃないんです。情報系の学科を卒業したので、もったいないと思った、とでも言えばよいのでしょうか。
大学を卒業して、全然何もわからない状態だったので職業につくなら、今まで少しかじったことを活かせる方が良いか、と思いました。ただ、これがやりたい、ということはありませんでした。
−ずいぶんと適当な…(笑)ファーストキャリアはどのような会社だったのですか?
キャリアのスタートは、数十名という規模の広告代理店です。広告代理店の中のエンジニアになろうとおもって、応募したんです。
でも、ここで大ポカをやらかしてしまいまして…
−どんなポカをしたのですか?
当時、私は広告代理店についてなんにも知らなかったんです。「エンジニア」「ディレクター」などの言葉も知らない状態でした。
で、その会社は、webデザイナーを募集していました。
私、勝手に「webデザイナーは、プログラムもやるのだろうな」と思い込んでいたんです。で、入社してみたらwebデザイナーはプログラムをやらなかった…。要するにプログラムをやりたかったのに、エンジニアの一人もいない会社に入ってしまったんです。
−それは…ポカを超えているような気がしますが…。
そうなんです…。そこで、デザイナーの仕事を期待されてもできないわけです。もちろん新卒なので即戦力とは思われていないのですが、「デザイナー」ですらなかったんです。
結局それで、社内のカンタンな計算機などのツールプログラム作成から任されて、社内初のエンジニアとして頑張ることになりました。
−プログラムの経験はどれくらいあったのですか?
実は、授業で週に2コマという程度で、ちょっとかじった程度、という具合です。しかも、Javaしかやったことが無かったので、web系の技術はゼロでした。
−そんな状態から誰も教わる人がいないのに、どうやってプログラミングをしたのですか?
どうしようもないので、学生時代の先輩に聞きながらプログラムを勉強しました。もちろん、頼りきりではいけないので自分で調べながら、必死にプログラムを書きました。
ただ、水があっていたらしく、そこではかなりプログラミングは上達しました。おそらく全ての基礎はそこで学んだと思います。やる気になりさえすれば、プログラマーの人が周りにいなくても、上達できると思います。
−具体的には、どのように勉強したのですか?
最初は全部ネットでソースコードなどを調べて、なんとか動くものをコピペで作っていました。
ただ、そのやり方は実務的になんとか動くものが作れる、という程度で、いいプログラムかどうか、上達するかどうかは全く別です。
−では、正しいプログラムの書き方をどのように勉強したのですか?
一番よいのは、人のコードを参考にすることです。特にオープンソースソフトウェアはコードがあちこちに落ちている上、基本的にスキルの高い人が作ったものなので、非常に勉強になりました。
公開されているソースコードをみて、他のその人のサンプルも見る。そうやって真似ばかりしているうちに、良いプログラムの「作法」がわかってきたんです。
例えば、コードをできるだけ少なくするために、共通化されているかどうか、他の人が見た時にわかりやすくするために変数名をどうつけるか、などです。他にもインデントの入れ方など、細かい話はいくらでもあります。
非常に良かったのはJqueryです。徹底的に読み込みました。
−それにどれくらい時間を費やしていましたか?
ほぼ毎日、10時間くらいは費やしていたと思います。出来ないのにやらなければいけない、というプレッシャーが大きくて、必死でした。
−その後、ゲーム会社に入ったと聞きましたが、転職を決意する動機は何だったのですか?
もともと間違えて入ってしまった会社だったので、転職はずっと考えていました。スキルも、勉強しているとはいえ、一人では不安だったのは間違いありません。だから次はエンジニアのいる会社に入ろうと思っていました。
それで、当時知り合いだった人材紹介会社の人から誘われて「gumi」という会社に入ったんです。
−入社時の印象はいかがでしたか?
「すごい人がたくさんいるな」と思いました。細かい話なんですが、テキストエディターの設定を1000行書いていた人が印象的です。1000行ですよ、1000行。設定だけで。
あとはPHPのコミッターたちがいました。彼らはプログラムそのものの開発者なので、プログラムの仕様を把握していて、関数を使った時のメモリの割り当てられ方まですべて把握していました。
それと、衝撃的だったのがプログラムを読むのが恐ろしく早い人がいました。ソースをパーッと見て、はいはい、っていう感じで速読するんです。「読書かこれは」ていう感じです。日本語ののようにプログラム言語を読んでいるんですよ。あれはセンスですね。
−プログラミングで苦労しましたか?
苦労した、というイメージは殆ど無かったです。いちおう基礎はできていたので。
でも、そこのゲーム開発はエンジニア8人と結構大規模なものでした。だから、根幹となる部分がきっちりしていないと、全部に影響が出ます。特にゲームなのでいかに早く表示させるか、が命です。
一人でやっていた頃は処理のスピードをそれまで意識したことがなかったので、キャッシュのさせ方、DB構成とその処理の振り分け、Gitの使い方など非常に勉強になりました。
−どのくらいの期間、そこにいたのですか?
半年間です(笑)
−半年間ですか?
ひとことで言うと、めちゃくちゃきつかったんです。働く時間が極端に長くって。残業毎日最低2時間の残業、そしてそこからが本当の残業時間という感じです。
毎日22時、23時まで仕事して、時にはホテルに泊まったりする。まあ、ホテル代も出してくれたので、会社は儲かっていたのですが…。
あと、前職が広告代理店だったので、いろいろな業界を広く見れたのですが、ソーシャルゲームの会社はすごいクローズで、何も他が見えないんです。
なんか、毎日ずっと、これからもここにいるのだな…とおもい始めてしまいまして、だんだん出社時間が10時なのに朝おきれなくなってくる。朝起きると「死にたい」ていう時もあって…完全にヤバいですよね。で、会社をやめました。
「ああ、自分は朝おきられないんだな」ってことで。
−その後、なぜ独立を?
正直、朝起きられないことをを理由に辞めるなら、もう今後会社に入れないと思いました。根本の部分で、自由に時間を使いたいな、と。
今は結果として、仕事を請けて時間に縛られている状態にはなっていますが、時間を自分で決めているので、全く苦にならない。やっぱり「労働時間の長さ」というより「決められない」というのがイヤなんです。
−仕事をやめて、生活のアテはあったのですか?
正直いうと、前職の広告代理店では知っているが業界ひろいので、紹介してくれるあてがありました。なので、退職したらすぐに前職の代理店に挨拶をしに行きました。そしたら、案件紹介してもらえました。とてもありがたかったです。
そこでとりあえず日々の生活はイケルと思いました。そのあとはまじめに仕事をやって、真面目に仕事をすると別の仕事を紹介してもらえるんです。そうやって少しずつ広げてきました。今は紹介が100%仕事のの受け口になっています。
−これからの展望は?
そうですね、今は社員がほしいです。3人から5人くらいまで増やしたいと思っています。エンジニアのスキルは外に投げられるので、デザイナーや営業が欲しいです。
重要なのはスキルじゃなくて、責任感と思想を共有できる人。結局、誰と一緒にやるかが大事で、何をやるかではないと思っているので、開発の仕事だけをやっていくわけではないと思っています。
−薄田さん、今日はありがとうございました!
薄田さんは現在、「あなたの先生を探せるサービス、クラウドティーチャーズ」において、「【WEB初心者向け】リリースまでのお手伝いをします」というカリキュラムを公開しています。
また「クラウドティーチャーズ」は、薄田さんご自身がほぼ一人で組み上げたシステムでもあり、自分で組み上げたシステムに、自分でカリキュラムを出しています。
−カリキュラムのアピールポイントは?
結構柔軟に対応できます。例えば、東京駅きてくれ、赤羽きてくれ、Skypeがいい、リリースはこんなことしたい、制作はお願いしたいんだけど、社会人、大学、ウチの社員教育してくれ、というのもOKです。
もちろん、相手が法人であっても対応可能です。カリキュラムはひとまず3回でやっていますが、目的に応じて柔軟に対応しますので、ぜひご相談下さい。
【バックナンバー】
【仕事のチカラ Vol.2】破天荒な26歳が起業したネタは「靴磨き」
【仕事のチカラ Vol.1】「新しい働き方」を演出していく。そんな仕事です。