平均寿命はどんどん伸びている。乳幼児死亡率の低下、栄養状態の改善、医療の発達。そして、肉体労働の減少。全てが人間を長く生かしてくれる。
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たった500年前。織田信長は「人生わずか50年」と謳った。生物としての人類の歴史は約200万年だが、寿命がこのような短期間で劇的に変化したことは、人類の歴史上初だ。
昔は老人は尊敬された。なぜなら病や暴力から「生き残った」という貴重な存在だったからだ。彼らは人よりも知識を持ち、崇拝の対象となった。老人は神秘的なチカラを持っている、と思われていた。
現在は違う。老人はいわゆる「弱者」であり「保護の対象」である。会社は65歳、70歳になれば彼らを定年という名の下に解雇し、年金で生活の面倒を見る。
彼らは働きを期待されていない。その証拠に日本政府は65歳以上を統計上「生産人口」としてカウントしていない。
65歳から平均寿命まで20年。長い年月である。だが、それほどの長い年月を働かず、僅かな年金のみで豊かに暮らせるのだろうか。
現在の日本の年金制度は、元はドイツのビスマルクが設計したものである。
だが当時、ビスマルクが引退の年齢を65歳と定めた1891年には、ドイツ人の平均寿命45歳にも達していなかった。今日の平均寿命でいえば、年金の支給開始を95歳に設定したことになる。つまり年金は「生き残ればもらえるもの」だった。
だから、30代、40代にとって、年金制度は当たり前のように滅び行くものとして捉えられている。一昔前までは、「老後は早く引退して、貯金と年金で悠々暮らしたい」だったのが、「老後はもらえるかどうかもわからない年金しか収入がない。貯金もない。不安だ」に変わった。
最近、老後の不安を煽る記事が増えているように思う。
・◯歳までに◯万円貯めないと「貧困にあえぐ老後になる」
・豊かな老後を送るためには、月に◯万円必要
と言った記事が、週刊誌の見出しに踊る。それは、彼ら中年の不安を色濃く反映している。
これを解決するためにはどうするか。カンタンである。65を超えても働くしかない。政権は、「一億総活躍社会」を掲げた。つまりこれは「引退はない」というメッセージを国が発していることに他ならない。
したがって一部の金持ちを除き、定年を迎えた65歳からどうやって稼ぐか、という問題に多くの人は直面する。
ただ、明るいニュースもある。働くことは昔と異なり苦行ではなくなった。肉体労働中心の頃は、60歳で既に体はぼろぼろだったが、今の60歳はまだまだ元気である。そして、60歳以上の起業率は増加している。
若者の起業は年々少なくなっている(Books&Apps)
経済産業省の中小企業白書2011によると、「起業希望者及び起業家の性別及び年齢別構成」というデータがあるが、
- 1979年には20代の起業家は全体の24%を占め60代以上の起業家が全体の7%しか存在しなかった
- 2007年には20代以下の起業家はたったの15%、逆に60代以上の起業家が27%も存在している
働くことで、若く、面白く、希望のある人生を送れる、と考える人は思っているよりもずっと多い。貯金や年金の心配をするよりも、商売をして稼ぎ、頑張って社会に参画しよう、という人が増えているのだ。
もう少しすると、「定年後の起業セミナー」みたいなものが流行るのだろうか。だが、その時になって慌てるよりも、いまから少しずつ副業などで練習をしておいたほうが良さそうだ。
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