「なんでもお金があれば解決する」という立場を取る方もいるが、私はそれに与しない。
お金にはできることと、できないことがあることは、はっきりしている。
人に手を動かしてもらうことはできるが、人に頭を働かせてもらうことはできない。
お金で最低限のことはやってもらうことができる。が、お金を多く与えたからといって、人はより考えて働くようになるわけではない。
人に頭を働かせてもらうには、お金は最低限として、加えてやりがいのある課題と有能な仲間、働きやすい環境が必要である。
人に命令することはできるが、 人に協力してもらうことはできない。
人にお金を渡して、命令する権利を買うことはできる。が、それによって得られるものは僅かである。本当に多くのものを得ようと思えば、人に協力してもらうことが必要である。
協力してもらうためには、あなたが「良い人」であり、「協力する理由」がなければならない。
人にお世辞を言われることはできるが、人に好かれることはできない。
お金によって、人から世辞を言われることはとても簡単にできる。あなたが札束をちらつかせれば、それを褒めそやす人は大勢いるだろう。
だが、人に好かれようと思えば話は別だ。好かれるためにはむしろ、話を聞いたり、信頼を示すなど、お金とは別の次元にある倫理で行動する必要がある。
人に羨ましがられることはできるが、人に尊敬されることはできない。
もしあなたが、「人から羨ましがられたい」という行動原理で動いているならば、お金を手に入れることが最も近道である。お金を得て、そしてつかうことで、あなたは羨望の眼差しで見られることだろう。
しかし、尊敬されるようになりたいのであれば全く話は異なる。
尊敬はお金では得られない。尊敬はその人の行動と態度、考え方など全人格を要求される。
消費と投資はできるが、創造することはできない。
お金はその本質として、「代行してもらう」ことが中心である。代行してもらえば商品は手に入るが、能力は手に入らない。
したがって、お金ができることは消費と投資である。誰か他の人に任せることである。しかし、創造することはできない。あなたがいくらお金を払っても、文学を作ることはできないし、科学的な発見をなすことともない。
せいぜい「出資者」「パトロン」として、わずかに名を残すことぐらいだろう。
楽しみは得られるが、幸福は得られない。
お金で様々な楽しみ、享楽を買うことはできる。ゲームをやるのも、旅行にいくのも自由だ。だが「幸福」は別のところにある。幸福は「社会に貢献する」ことであったり「何かを生み出す」ことであったり「人から感謝される」ことの中にある。
お金によって一時的な楽しみを買うことはできよう。しかし、幸福は得られない。金による楽しみが尽きれば、後には堕落のみが残る。
生活はできるが、価値ある人生は得られない。
お金で生活は安定するだろう。ただ、その先にある「価値ある人生」は別である。もちろん安定していることそのものが価値ある人生だと思う方も居るだろう。私もそう言った人々に特に反対はしない。
だが、安定していることだけで80年の人生を「価値あるものだった」と死に際に思えるかどうか、私は疑問がある。価値あるものだったというためには、どんなことでも良いので何かを成し遂げる必要がある。
お金がいくらあっても、人は結局死ぬ。
お金は死後の世界に持っていくことができない。死んでしまえば皆いっしょである。金持ちだった、というだけでは、皆あなたのことをすぐに忘れるだろう。
お金は、その限界を知り、うまく使おう。
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