ある方と「働くスキル」について論じていた時、勉強会の話が出た。
SNSなどで人との交流がしやすくなったこともあり、確かにまわりで勉強会の開催が増えてきたように感じる。
ただ課題もある。 代表的なものが「勉強会」がきちんと活かせているのか、という問いだ。
どう感じるだろうか。 技術者、マーケター、営業など様々な分野の勉強会はあれど、 この反応はキレイに二つに別れるだろう。
「役に立たなかった。時間の無駄だからもう行かない」というものと
「役に立った、人脈もできて最高だった」というものだ。
勉強会は多くの時間を使うため、可能な限り実のあるものにしたいというのは 共通の願いだと思うが、活かしきれていないことも多い。
機会を活かすコツはあるのだろうか。
思い起こすと、前職のコンサルティング会社では「勉強会」を相当数やった。
ほぼ 10年以上にわたり、何かしらの形でほぼ毎週やっており、 新人の育成、標準化の推進、テキストの作成、ありとあらゆる勉強会があった。
その中でもよく思い出すのが「標準化」だ。 コンサルティングは属人的だと言われるが、可能な限り属人性を無くし、会社としてのクオリティを担保するために、ある程度の「一般解」を予めいくつか用意しておく。
例えば一つの例として人事評価制度を導入する時の「IT業の場合の標準的な評価項目」 「製造業の場合の項目」「建設業の項目」などだ。(実際はもっと細分化されている)
もちろん人事だけではなく、「品質管理の基準の定義とその技法はIT業では… 製造業では…」と言った具合に 様々な標準化が存在した。
自分たちの勉強会を通じて生み出されたものが、直接お客さんに伝わるのだから、皆真剣に勉強会に参加する。
また、余談だが勉強会で上司に自分の能力をアピールをすることも、期末の評価の対象となっていた。
話を元に戻そう。
にも関わらず、勉強会が全てメンバーにとって有意義だったかは疑問の余地がある。 勉強会を活かせる人、活かせない人は比較的はっきりしている。勉強会が活かせるのは次の人だ。
1.発表する人
2.議論する人
3.教える人
「発表しない人」「議論に参加しない人」「教わるだけの人」は参加した、という満足感と多少の知識は得られるかもしれないが、セミナーで十分だ。勉強会という場に参加する意味はあまりないだろう。
我々の勉強会は、次のように進んだ。 まずは誰かが事例を発表する。
赤裸々な事情は隠してしまいがちだが、内情を言えば言うほど、 本質に迫ることができ、実入りも多くなる。
そして事例は「机上の空論」で済ませないため、どちらかと言えば「うまくいかなかったこと」を中心にしたほうが良いように感じる。
もしくは「このようにやったけど、これでよいのか」という投げかけでも良い。
トルストイは、その著作※1の中で「幸せな家族はどれも似ているが、不幸な家族にそれぞれの不幸の形がある」と言った。
それを真似れば「成功はどれも似ているが、失敗はそれぞれの理由がある」ので、成功事例だけを見てもスキルが上がらない。
ここでの注意点は「どうやって解決したか」をその場では言わないことである。理由は後ほど述べる。
そして、それに対して皆がディスカッションする。皆が考えぬいて、意見を述べる。
目の前の人の課題を解決するべく、様々な知恵を皆で出し合う。時には意見が別れ、激しい論争となるときもあった。しかしこのダイナミックな過程が、新しいアイデアや考え方を誘発する。
この過程は「弁証法的」と言えるだろう。
弁証法
物の考え方の一つの型。形式論理学が、「AはAである」という同一律を基本に置き、「AでありかつAでない」という矛盾が起こればそれは偽だとするのに対し、矛盾を偽だとは決めつけず、物の対立・矛盾を通して、その統一により一層高い境地に進むという、運動・発展の姿において考える見方。
(Google)
ここまで来ると場がかなり「温まっている」ので、最後に「どうやって解決したか」を発表する。
「こうやったけど、これでよいのか」という疑問に対しては、ある程度権威を持った人間が「正解」を解答する。
議論の後には、解答が知りたい気持ちになっている。この抜群に集中力が高まっている状態でノウハウが教えられると、自分の中への残り方が全く異なる。
そして肝心なのはここからだ。
そして、この全てのプロセスに共通するのが 「間違い、恥をかいた人ほど、勉強会が役に立つ」ということだ。
内情を暴露するのは恥ずかしい。
自分の意見を言って、間違っているのは恥ずかしい。
議論に負けたら、恥ずかしい。
そういった感情を突破した人が、もっとも勉強会が役に立つ人だ。
恥をかいた分野は、絶対にわすれない。 だから、勉強会を真に活かせる人は、発表して恥をかき、議論して間違い、教えて自分の浅いことに気づいた人なのだ。
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