最近、「自律」あるいは、「充実した人生を送る」というテーマで幾つかセミナーをやってみた。断っておくが、私は自己啓発本が好きではない。しかし、「マネジメント」を考える上で、このテーマを避けて通ることができなくなったため、実験的試みとして、セミナーを作ってみたのである。
結果は、大成功だった。現在までに行ったどんな「ビジネススキル系」のセミナーよりもお客様に喜んでもらえたのである。この傾向は半年前から現在まで一貫している。一体何が良かったのだろうか。
事の発端は、お客様からいつも頂く、「社員が自分で考えてくれるようになってほしい」という言葉だった。最近では特に、経営者や管理職が「マネジメント」を行なっていく上での悩みは、ほぼここに集約されている。
過去から現在まで、管理職向けのセミナーはそれこそ有象無象、真砂の数ほど存在している。しかし、それらのセミナーで教えている内容は殆どが、「部下との会話を行うやり方」「褒め方」「しかり方」「コーチング」など、スキルに偏っているものだった。
しかし、言い方は良くないかもしれないがそれらのセミナーは「対処療法的」であり、実際には社員から「小手先のテクニック」と見ぬかれてしまう事がほとんどである。従業員はそんなにバカではない。マネジメントはテクニックではないのだ。
したがって、我々は「今までとは異なる」話をする必要があった。「テクニック」に頼らず、「自分から動いて考える部下を育成する」マネジメントを行うにはどうしたら良いかという命題だ。
我々は色々な文献をあたり、事例を調査し、顧客へヒアリングを行った。その結果、「上司は、部下の人生を充実させるための手伝いをする」ことが「自律した部下を育成する」ことと全く同じであるという結論に達した。
仕事は人生において多くの時間を占める。起きている時間のほぼ半分、人によってはほとんどを仕事の費やす人もいる。その「仕事の時間」を充実させずして、どうして人生の充実があり得よう。
そして、人生を充実させるために必要なことは以下の4つであると結論づけた。
1.自分で決定すること
2.金銭的な不安から開放されること
3.友人や仲間、家族と良好な関係を作れること
4.人の役に立つこと
この4つこそ、上司が最大限、仕事を通じて手を貸すべきテーマである。これらが実現出来れば、結果的に会社の業績も向上する。繰り返すが、「マネジメント」はテクニックではない。
部下の人生の充実に貢献することを通じてのみ、部下の信頼を勝ち得ることができるのである。