「働かざるもの食うべからず」という言葉がある。文字通り、「働きたくない人は、食べてはいけない」という意味だ。Wikipediaによると出典は聖書らしいのだがそれが本当かどうかはともかく、この言葉に対して同意する人は多いだろう。
そうした背景もあってか、「生活保護」など、働かずしてお金がもらえる制度に対しての世間の目は非常に厳しい。具体的には生活保護の改正などが取り沙汰される状況になっている。
もちろん、不正受給は問題があるが、不正受給の割合は全体から見れば0.5%程度であり、取るに足りない数字である。むしろ摘発に余計なコストを掛けるほうが国のコスト負担は増えそうなものなのだが、どうやら不正受給を放置することを感情的に認められない人はたくさんいるようだ。
要は、「オレがまじめに仕事しても月20万しか稼げないというのに、働かないで30万ももらえるのか、不合理だ!」という訳だ。もっといえば、「こんなにつらい思いをして働いているのに、それ以上に楽をしてお金をもらっている人がいるのは、許せない、ムカつく!」と言っている。
言い分はよく分かる。つらい仕事を毎日続けても、ラクをしている(ように見える)生活保護の人よりも生活レベルが低いのは我慢できないだろう。不正受給の話を聞けば、更に感情的になってもおかしくはない。
さて、生活保護については上のような状況なのだが、会社の内部においても同じような話がある。「あいつは大した仕事をしていないのに、オレと給料や地位が一緒だ、ムカつく!」というやつだ。
場合によっては、「アイツのせいで、モチベーションが下がってしょうがない」という話にもなり、常に人事評価の際に話題になる。
実は、生活保護を非難する人と、社内の他人の給与を気にする人にはある共通点がある。それは、
「仕事が嫌い」
ということだ。
根っこは同じ。「オレがつらい思いをしているのに、あいつが楽をしているのは許せない」という感情だ。
本当に仕事が好きな人は、そんなことは気にしない。「他の人がいくらもらっているか」はどうでもいい話だと思っているし、仕事が好きなので「自分の負担が増えた」とも思わない。むしろ、「もっと仕事をさせてくれ、君の分まで」という気持ちだろう。
「働かない奴はムカつく」という人は、実は「仕事が嫌い」であり、「こんなにつらい仕事なんかしたくない」とムカついているのだ。その矛先が、他人に向かってるだけである。