4月から昇進・昇格ということで管理職となる方も多いだろう。
部下を持つ管理職になることは一種の「転職」だから、ヒラ社員とは別のことが求められる。
では、具体的になにが求められるのか。
一言で言えばそれは「部署の成果」をあげることだ。
そして、一般的に管理職になると、下の3種のどれかとなる。
1.自分で全部やってしまう管理職
2.部下を恐怖で動かそうとする管理職
3.部下に自主的に動いてもらおうとする管理職
最もレベルが低いのは1.だ。
これはヒラ社員の時とやっていることが何も変わらない。部下は育たないし「手柄は全て上司」という最悪のパターンで、早晩、管理職失格の烙印を押されるか、自分が過労で潰れる。
せいぜい、持って1,2年だろう。
多いのは2.のパターンだ。
人事評価や叱責、懲罰をチラつかせ、恐怖で人を支配する。
だが、恐怖で動く人は疲弊する。離職率は高まり、上司の評判は地に落ちる。多くの場合成果はあがらない。
ただ、商品が良かったり、本当に優れたやり方を生み出した時は、成果を出してしまう人もいる。その場合はまわりにYesマンが集結し、ますます管理職は頑なになる。
ただし、これは永く持たない。ビジネスは商品や手法の陳腐化が早いため、大体は競合に追い落とされるか、業績が下がっった時点で内部からの反乱が発生し、彼はその地位を追われる。
大体3年から5年で体制が崩壊するが、8年程度持つ時もある。
最も困難な道だが、永続できる可能性のある管理職は3.である。
3のやり方を成功させるカギは「人望」にある。人望がある管理職は、彼のために人が働く。そのようなマネジメントは時代の変化にも対応しやすく、疲弊することも少ない。
だが「人望」とはなんだろうか。抽象的すぎて掴みどころがない、と思う人も多いのではないだろうか。「カリスマ」やら「人望」のような再現性のないものに頼れない、という人は多い。
だが、私が観察したところ、その本質は非常にシンプルだ。再現性もある。
人望の本質は上司が部下に持つ「関心」にあるからだ。
人望のある人物は、部下に対する「関心」をコントロールすることで、部下を動かす。
今でも憶えている。あるIT業の人事評価面談に同席していた時のことだ。
上司が高評価を伝えると、彼は不満そうな顔をした。
「高評価なのに、不満なのか」と聞くと、彼は
「本当に、私のことを見ていてこの評価なのですか。上司は私が普段何をやっているか、どのようなスキルか、ほとんど顔も合わせておらず、何も知らないのではないですか」と言った。
彼は、その後半年して転職した。
松下幸之助氏の腹心である江口氏は、下のように語った。
さらに、翌日も真々庵のサロンで話をしていると、またもや松下は「今度、米国からハーマン・カーンという人が来るそうや。きみ、どういう人か知ってるか」と言う。3度目の同じ質問に、私は憤りを感じていた。
なんということか。いかに私が一社員の若輩であっても、もっと真剣に尋ねてほしい。
ずいぶんといい加減に聞いているのではないかという思いが、心の中にパッと広がった。表情も険しいものになっていたはずである。(東洋経済)
上の記事で注目すべきは、松下幸之助氏の発言ではない。実は、部下である江口氏の心の動きが、最も興味深いのだ。
お読みいただけるとわかるが、江口氏はトップである松下幸之助の「自分へ対する関心」に始終興味を持っている。そして、松下幸之助の関心の高低によって、彼の気分も上下する。
これは、親と子供の関係にも見て取れる。
米クレアモント大学院教授のミハイ・チクセントミハイ氏は、子供にとって最も重要なことの一つは「両親の関心」と述べる。
子供は良心が自分に何かを期待しているということ、そしてもしその期待に添わなければ、。ある特別な結果が生じるということを知らなければならない。
しかし彼らは同時に、何が起ころうとも両親の自分への関心には疑問の余地が無いことを認識していなければならない。
期待に添えないことで両親から失望されたり叱られたりすることは子供にとっては必要な過程だ。それが社会の縮図である。だが両親が「子供への関心を失なってしまうこと」は子供にとって致命的な出来事だ。
上司と部下の関係も同じだ。「失望」や「叱責」は問題ない。が「無関心」は致命的だ。
仕事を自分でやってしまう上司も、恐怖で人を支配する上司も、本質的に部下に興味がない。興味の対象は業績と自分だけである。
人望に依るマネジメントの本質は「部下の一人ひとりに関心があるか」に尽きる。逆に人に関心のない人物は、いくら仕事ができても、部下に自主的に動いてもらうことはできない。
・部下の報告に彼らの心の動きを読み取れるか
・部下がなぜ働くか理解しているか
・部下の主要な価値観を知っているか
そんなことに興味があるかどうかが、管理職には問われている。
「テクニックではない」と言われる所以は、本質的に人に興味のない上司は、表面をなぞるマネジメントは出来ても、人を惹きつけることができないからである。
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