達人のサイエンス―真の自己成長のために新卒採用をしている会社にとっては当たり前のことだが、一般的に「新卒」はやる気に満ちている。それこそ、ベテランの停滞感を打破するくらいに。

 

新卒が入ることで企業は活性化し、4月から5月にかけて企業は若々しい雰囲気に包まれる。ところが、新卒が入社して3ヵ月、半年、そして1年も経つと徐々にやる気が減退する人がちらほら現れ、3年も経てば3分の1が離職する(厚生労働省の調査)。

余談だが、「ブラック企業」として槍玉に挙げられているユニクロは、1000人超の企業の離職率が20%~30%に対して、50%超と群を抜いて離職率が高い。ワタミについても45%超と、(業界平均より低いと主張しているが)高めに出ている。

 

もちろん、「離職率が高い会社」がすべて「ブラック企業」と言うことではないと思うが、採用戦略上は、不利であることは間違いないだろう。足りない人員を補充するコストも馬鹿にはならない。

 

逆に、「ホワイト企業トップ300」というランキングを東洋経済新報社が発表しているが、ここは新卒の定着率が良いとされる会社だ。顔ぶれを見るとなんとなくインフラ系、大企業、安定、というイメージが有る会社が揃っている。

「安定した大企業に入ってもつまらないよ」という批判もあると思うので、上のリストの会社が全ての人に対して「良い会社」であるとは限らないということは、言うまでもない。

 

一方、世界最大のビジネス誌である、米国FORTUNE誌が「働きやすい会社ベスト100」に選定した会社はこのリストで見ることができる。1位はGoogle、2位はSASなど、ソフトウェア業の会社が多いイメージだが、概ね成長率の高い、知識集約型の会社が多い。

 

このような会社は良い人材が集まり、それがさらなる競争力を生み出している。

 

 

 

そこで少し考えてみる。「ブラック企業」と言われる企業と、「ホワイト企業」と言われる企業と、何が違うのか?なぜ、離職率にこのような差が出るのか?

労働政策研究・研修機構の調査によれば、若年者の離職理由は大きく3つである。

 

1.仕事上のストレスが大きい 43%

2.給与に不満 31.3%

3.労働時間が長い 29.9%

4.職場の人間関係がつらい 27.9%

 

これだけを見ると、なんとも「わがまま」な理由に見える。しかし、これらだけを見ていては、真の離職の理由は見えてこない。これは、言うなれば「最終的な理由、会社に報告した離職の理由」であろう。

 

実は、他に面白いデータがある。「若年者が、最初にやめようと悩んだきっかけは何か?」という質問に対しての回答だ。

 

1.仕事の内容に不満 43.3%

2.賃金が低い 41.6%

3.職場の人間関係 29.5%

4.会社の将来性が不安 29.4%

 

ここから見えてくるところは、おそらく以下の様なシナリオだろう。

 

 

希望に満ちて入った会社だったけど、1年も経って、通常の仕事には大分習熟した。でも、最近は自分の仕事がつまらなく感じる。新しい挑戦もないし、会社の将来性や、賃金にも不安がある。このままでいいのだろうか?

この間上司と面談があった。言われるのは売上の数字を追い求めることだけ。「頑張れば成長できる」なんてこと言ってたけど、結局上司が言いたいのは「数字やれ」だろ。去年は頑張って数値を達成したけど、今年も数字を達成できるかどうかはわからない。

もちろん数字をやることは承知している。頑張ろうとも思う。でも、その先に何があるんだろう?定年までこんな感じなのか?うちの上司みたいになりたくない。

そういえば、友人の入ったソフトウェアの会社は景気がいいらしい。ボーナスが6ヶ月分も出たと言っていた。なんでこんな差があるのか。うちの会社はなんで、労働時間がこんな長いのに給料安いんだ。

自分で新しい勉強をしたり、どこの会社でも通じるスキルを付けたいが労働時間が長く、拘束される。家に帰ってくれば、疲れて何も出来ない。

そうだ、こんな会社辞めてしまえ。もっといい会社があるはずだ。

 

 

こんなシナリオがあちこちにあるのではないだろうか?いろいろな企業で若手と面談をすると、上のような意見を述べる人はほんとうに多い。

 

 

ではどうするのか。ヒントは「達人のサイエンス」という書籍の中にあった。要は、「若年者のイメージする成長イメージ」と、「企業が与える成長イメージ」とのギャップを解消することが重要だというのだ。(後編に続く)