かつて国際連盟の事務次長を勤め、五千円札の券面にも印刷されていた新渡戸稲造が、「人格の養成」という短編を著している。人格の養成とは又大きくでたな、と思って読んでみるとなかなかおもしろいことが書いてあったので紹介する。女学校の卒業式で、卒業生に向けて語った話だ。
彼の言うには、人生で大切なことは、以下の3つ。
1.本を読むこと
知識というものは、すこぶる役に立つ。そのために「読書」をするのだ。本を読む力さえあれば、大概な問題が湧いても、どうかこうかそれに判断を下すことができる。たとえば大根を作るときに、肥料はどうする、筋っぽくしないためにはどうする、など色々なことが問題になるが、本を開けてみてみると、ちゃんと書いてある。
私より怜悧な人がたくさん世の中に居る。しばしば質問に答える苦し紛れに、本を読んで、それで間に合わせたことがしばしばどころではなく、始終やっている。まず書物を読む力さえあれば、世の中のことは大概間に合っていく
2.日記を書く
英語で日記を書くのが良い。5行でも、10行でもよろしい。また、知らない英語が出てきたが、字引を引く。それを読んでみては、知らない字を探してから日記を作る。これらも読書力を進める一つの方法である。
3.思想を養う
最も大切なところは、思想を健全にする、ということである。世の中に出れば、困難はたくさんある。その艱難を利用して、己の人格をいっそう高くする。困難から逃げてはいけない。
現代とはもちろん時代背景も違うので、必ずしもすべての人に当てはまるとは限らないが、これが今から100年以上前に語られた言葉ということを考えると、彼が女性の社会進出に如何に先進的な考え方を持っていたかがわかる。
時代が変わっても、大事な習慣はあまり変わらないのだろう、と思う。