記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)企業が若手に比べて、年配の採用を嫌う理由の一つに、「年配者は、若手に比べて新しいことを学ぶのが遅い」といわれていることが挙げられる。「ベテランは頭が固い」であるとか、「中途採用は仕事のスタイルが出来てしまっている」だとか、そのような話はどこの企業でもよく聞かれる。

 

しかし、果たして、これは本当なのだろうか?

 

まず、「記憶力」について検証してみる。脳科学者であり、「記憶力を強くする」という書籍の著者である池谷氏は、「記憶力と年齢は無関係だ」と述べる。アルツハイマーなどの病気や、高齢化に伴う脳の萎縮などがない限り、記憶力は使えば使うほど良くなるというのだ。

では、記憶力でないとすれば、「論理的な考え方」や、「知識」が若者に比べて乏しいのだろうか?ちょっと考えただけでも、とてもそうは思えない。

 

では、「年配者は、学ぶ意欲に乏しい」ということだろうか?色々と調べてみても、「年配者が若者に比べて学習意欲に乏しい」という客観的なデータや、研究結果は見当たらない。

 

 

では、なぜ「年配者は新しいことを学ぶのが遅い」という言われ方をするのだろう?あるいは、これは単なる偏見なのだろうか?

 

ここからは仮説だが、いくつかの理由が考えられる

 

1.「仕事のやり方」にこだわっている

中途で採用された人物は前の会社で経験を積んでいることが多い。その仕事のやり方が新しい会社の価値観ややり方にそぐわない場合、中途で採用された人物が「このやり方でやってきたので」という主張をすると、「郷に入っては郷に従え」と反論されるだろう。この場合トラブルが起こる可能性がある。

 

2.中途採用の人に言いにくい

長いこと一緒に働いてきた人物にくらべ、中途採用の人物は付き合いが短い。その場合、「このやり方でやってくれ」というような命令などが言いにくく、トラブルが起こる可能性がある。また、上司と部下で年齢が逆転している場合も多々あり、更に言い難く感じる人もいるだろう。

 

3.有能な人を採用できていない

勉強に対する意欲が低い人しか採用できていない会社も多くあるだろう。新卒に比べて質の低い人材が入社してきた場合、「中途採用は勉強しない」といわれる可能性がある。

 

 

仮にこの3つのうちのどれかが「年配者が若者に比べて新しいことを学ぶのが遅い」と言われている原因の場合、

 

1.社外のやり方を取り入れるチャンス

であると考えたり、

2.相手が誰であっても、きちんと意見を述べることができる風土

を作ったり、

3.採用のやり方を見なおしたり

 

など、その企業自身も改善できそうな余地はかなり有りそうに思えるのだが、どうだろうか。