minimum法で定められた「最低賃金」というものがある。東京都では現在のところ時間あたり869円である。月25日、一日あたり8時間の稼働で月換算すると、月17万3千800円である。

ところで、アメリカで最低賃金が話題になっている。

 

米で最低賃金引き上げ論争 背後に経済格差の拡大 (日本経済新聞)

連邦法が定める7ドル25セント(約760円)の最低賃金で働く人々は約160万人。その半数以上は飲食と流通部門にいる。以前は若者のアルバイトが中心だったが、今や全体の約4割が25歳以上で、多くは子持ち。一家の大黒柱も少なくないだけに賃上げ要求に熱が入る。

(中略)左派系の米経済政策研究所(EPI)は民主党がめざす10ドル10セントの最低賃金が実現すれば、間接的な効果も含めて3000万人、500億ドル分の収入が増えると試算。これが最終的に14万人の新規雇用を生むとした”

 

実現すれば、最低賃金で働いている人々の給与は30%アップする。しかし、これには予想通り、というか当然というか、批判も多い。

 

”保守派の経済学者は「副作用が勝る」とみる。米経済学界の重鎮、ハーバード大のフェルドシュタイン教授は米紙に寄稿。「企業の合理化や機械化で経験不足の若者が職を失い、商品などへのコスト転嫁で消費者も割を食う」と主張した”

 

さて、本当に最低賃金の引き上げは「副作用が勝る」のだろうか?記事によれば、必ずしもそうではないようだ。

 

”かつて経済学界では「高い最低賃金は雇用にマイナス」が定説だった。だが1990年代、最低賃金が異なる地域での実証研究が定説を否定し、事態が複雑になった。”

 

 

さらに、以下は私見だが、データを見ても最低賃金はおそらく雇用とあまり関係がない。これは、東京都の例を見るとよく分かる。

 

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過去10年で、東京都の最低賃金は708円から、869円になっていた。実に20%以上のアップである。また、この間の消費者物価指数の推移は、下のように、ほぼヨコバイであるから、この上昇はインフレの影響とはいえない。デフレの間にも、一貫して最低賃金は上昇し続け、商品へのコスト転嫁もなかった。

 

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画像出典:http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=PCPI&c1=JP&s=&e=

 

では、失業率はどのように推移したか。

 

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画像出典:http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=LUR&c1=JP&s=&e=

 

見ての通り、最低賃金が一貫して上昇しても、失業率には影響がない。「最低賃金の上昇は、雇用とあまり関係がない」といってもいいだろう。

 

最低賃金で働く人々は年収約213万円、これは家族が満足に暮らせる金額とはいえない。「赤旗」によれば、年収200万円に満たない世帯の割合は20%であり、依然として増え続けている。低所得層の人々の収入は消費に回される割合が高いのだから、最低賃金の上昇を徹底的にやって経済を活性化することは相当に合理的なのではないだろうか。