どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか? (角川文庫)ド直球なタイトル「どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?」という本。

すい臓がんを患ったスティーブ・ジョブスは「もし明日死ぬとして、今日やっていることは本当にやりたいことか?」と毎朝自問自答したという。そういった境地に至ることは普通の生活を送っている限りは中々無いが、身近な人が亡くなったり大病を患ったりすることを経験すれば、一般的な人であっても「死生観」を改めて持たざるをえない。

 

作者の中島義道氏は哲学者であるが、ラディカルな発言をすることで知られている「戦う哲学者」である。ウェブでもインタビューが読めるが、面白い。

まずは自己啓発本を捨てよう

”私は他人の意見は何も参考にならないと思っている。各人それぞれ違うから。だから、わざわざそんなところによく行くなぁと思っています(笑)。講演会に行ってもしょうがないじゃないですか、他人のことなんだから。他人はちらっと参考にするくらいはいいけれども、自分に何の適性があるかは、自分自身でしか決められませんよ。”

 

今の若者はプライドが高すぎる

”プレハブでいいから会社を全部個室にして、ごくたまにほかの社員と一緒であるようにしたら、かなりの人が就職すると思います。いつも後ろ向きな暗い人だけでできている実験会社を作ってみるのも面白いですね。社員食堂も何もなくて、行事やレクリエーションも行きたい人だけ行けばよくて、ほかの社員が来ているかどうかもよくわからないような(笑)。”

 

など、色々とバッサリ切っているのでご興味のある方は読まれると良いと思う。

 

 

さて、この本であるが、この本を買おうと思う人はよっぽどの変人だと思う。というか、タイトルを見ただけで周りの人が心配しそうなタイトルだ。読んでいくと、次々と出てくる鬱の人や、生きるのに疲れた人の話に圧倒され、息をつくヒマもない。

 

結局のところ、中島氏の主張は、

「自分はやがて死んでしまう」ということより重要なことはほかにはなにもなくて、仕事とか家庭とかはそのことを考えないようにするためのひまつぶしである。

に集約される。まさしく夢も希望もない。

 

じゃあ、なんでこんな本を読んだのか?

単純だ。

たまには「人生なんてくだらない」

っていう本を読んでもいいんじゃないかと思ったからだ。

 

そう思えば、余裕もでる。人に対して寛大になれる。

「こまけぇこたぁいいんだよ」