a0002_000816たくさんの会社を見てきたが、組織は難しいな、と常に思う。そして、組織の成長するパターンは、その人数により同じようなパターンをたどる。

 

零細企業

零細企業、人数が数人を超えないうちは、組織のパターンは2つしか無い。「社長」と「社員」という垣根があまりない「スタートアップ」というイメージの組織と、社長以外全員アルバイト、といった雰囲気の組織だ。

優秀な人が集まってできたスタートアップはそもそも「偉そうにする」ということが許されないため、良く言えば平等、風通しの良い雰囲気だ。悪く言うと「組織ではなく、全員個人事業主」とも言える。

逆に「社長」が強力な零細企業は良く言えば「リーダーシップが発揮されている」が、悪く言えば「ワンマン社長」である。

 

零細企業の時は「人で苦労する」ということはあまりない。決定的に重要なのは「商品が良いかどうか」だからだ。商品が良ければ目の前の仕事には困らないし、食べていくにもそれほど不自由しない

しかし、商品が大きくブレイクしてしまうと、状況は変わる。

 

100人から300人

商品がブレイクすると、新しく人を採用しなくてはいけない。

社長のワンマン会社であれば「従順な人」を欲しがるので、100名位までは会社が大きくなる。ただし、幹部が育たないのでそれ以上大きくすることができない。300人以上の社員がいる会社にするには、幹部が育つことが必要条件だからだ。

したがって、ワンマン社長が直面する問題は「任せられない病」である。人に任せることができなければ、会社は大きくならない。ただ、任せるのは不安である。

そういうジレンマを乗り切った社長だけが、会社を300人以上とすることができる。

 

翻って、ワンマンでない会社はどうだろう。実は商品がブレイクした時点で問題が起きる。

「幹部」と「社長」の衝突だ。殆どの場合はどちらかが追い出されて、会社は分裂する。

実際、これを上手く回避するのは難しい。有能な人は「社長」ばかりがもてはやされて、自分がずっと2番手であることが我慢できないからだ。2番手の自己顕示欲が強くなければ回避できるケースも有るのだが、そういったことは少ない。こういったお家騒動や、裏切りでそれ以上事業が成長しなくなるケースは多い。

これを上手く回避する方法はいくつかあるが、「2番手」に子会社を与えてしまう方法がよく取られる。そして、立ち上げ当初はそちらに仕事を与えて育てる。このやり方でグループ全体として300名を超えるような会社に成長することが可能だ。

 

300人から1000人

さて、300名を超えると次の問題が起きる。次は「新規事業」が足りなくなる。実際単一の事業で何百人も食べていけるような幸運な会社は少ない。

新規事業の成否は純粋に確率の問題であり、「いろいろなことに手を出し、上手く言った芽を見逃さず、大きく育てる」という手順を踏む以外のパターンは少ない。したがって、ワンマン社長が苦手な領域である。どうしても過去の成功にとらわれてしまうため、「自分の目からみて良い悪い」を判断基準にしがちである。社長が仮にセンス抜群で、アイデアマンであっても一人ですべての新規事業を生み出すことは難しい。

この時期になるとワンマン社長は銀行、あるいは取引先から様々な人材を受け入れ、多様なカルチャーを受け入れていく必要がある。「純血」にこだわると、うまくいかない。

 

ところが、2番手などを新会社の社長として多角化していた会社はこの手の立ち上げが得意である。ただし、300名から1000名の会社に成長するためには成長事業にもう一度集中する必要があるので、グループ会社の社長といえど業績が悪化すれば「会社を潰して撤退」もあり得る。その際の分裂を防ぐことができれば、1000名の会社も夢ではない。

 

1000人以上

さて、ようやく1000名を超えることができた。この段階に到達すると、もはや自社だけで新規事業を生み出すという発想もなくなり、M&Aで会社を大きくしていくというステージに突入する。

M&Aは更に難しい問題として、「相手会社のカルチャーの尊重と統合」と、「事業のシナジー」という問題があるのだが、その話は別の機会に書くこととする。