明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命第二の人生、という言葉は現代の言葉である。ピーター・ドラッカーの分析によれば、現代は「歴史上初めて、人間のほうが組織よりも長命になった」時代である。

そして、問題が生まれた。「定年退職し、仕事を失った人は、それから何をすればよいのだろうか」という問題だ。

 

ドラッカーはこう述べる。

”もはや、30歳で就職した組織が60歳になっても存続しているとは言い切れない。そのうえ、ほとんどの人間にとって、同じ種類の仕事を続けるには、40年、50年は長すぎる。飽きてくる。面白くなくなる。惰性になる。耐えられなくなる。周りの者も迷惑する。”

 

実はその問題は60になる前にすでに起きている。

”今日、中年の危機がよく話題になる。45歳にもなれば全盛期に達したことを知る。同じ種類のことを20年も続けていれば、仕事はお手のものである。学ぶべきことは残っていない。仕事に心躍ることは殆ど無い。”

 

肉体労働者であれば40年も働けば肉体、精神共に疲れ果ててしまう。働くことよりも余暇を楽しむことに当てたいと思う。しかし、知識労働者はそうではない。

”30歳の時には心躍る仕事だったものも、50歳となれば退屈する。だが、あと20年とは行かないまでも、10年、15年は働きたい。したがって、第二の人生を設計することが必要となる。”

 

肉体労働者が全人口の半数を割り込むことになったいま、「何をしたらよいかわからない」という老人が増えることは必定である。

人によっては趣味が充実しているから良い、と答えるかもしれない。ボランティア活動に勤しむ人もいるかもしれない。または、株のトレードをやって過ごす人もいるかもしれない。しかし、本当に充実した第二の人生を送りたいのであれば、早く準備を始める必要がある。

ドラッカーはこう述べる。

”しかし、第二の人生を持つには、一つだけ条件がある。本格的に踏み切るはるか前から助走していなければならない。

労働寿命の伸長が明らかになった30年前、私を含め多くの人達が、益々多くの定年退職者が、非営利組織でボランティアとして働くようになると予測した。だが、そうはならなかった。

40歳、あるいはそれ以前にボランティアの経験をしたことがない人が、60歳になってボランティアになることは難しかった。

前出の弁護士(私立高校の設立を行っている)は35歳頃にはいくつかの学校に手をかしていた。40歳で教育委員になっていた。そのため40歳になって生活に余裕ができると、モデル項の設立に取り組むことができた”

 

 

現在、30代、40代の働き盛りと言われている人々がいる。しかし現役で活躍できるのはあとホンの20年ぽっちである。いや、もっと短いかもしれない。

本業や職場以外にも本当に意味のあることを今から少しずつでもやっておかなければ、老後に無為に過ごさざるをえない事になるかもしれない。それはとても恐ろしいことだ。