社会人になっても宿題は出る。それも山ほど。しかも、忙しい時に限って、宿題が多い(ように感じる)。だから、宿題をきちんとやる人は非常に少ない。
かつて私は数百社に渡る会社に訪問したが、宿題を本当に「キッチリ」と仕上げてくる会社は20社に1社程度だ。
大抵の会社において宿題をやってきたかどうかを確認すれば、以下の様なやりとりになる。
「先週の依頼事項、どうなりました?」
「これです」
「あれ、お願いしたのは4つですが、足りないようですね…」
「すいません、2つは時間がなくてできませんでした。」
「…」
これは部下に仕事を依頼する時と状況はあまり変わらない。
「先週頼んだ提案書の案だけど、出来上がった?」
「はい」
「じゃ、見せて。」
「わかりました。これなんですが…」
「(やっつけ仕事じゃないか…ちゃんとやってないな) これが精一杯?」
「はい。考えたんですけど、よくわからなくて…」
最初、わたしは「宿題をまじめにやる気が無い」のだと思い、1人で憤慨していた。
しかし、多くの事例を見るにあたり、はっきりと「これは、宿題を出す側の責任も大きい」と確信するに至った。
そして、宿題をやってこない人にどのような状況だったかを聞き、原因を洗い出すと、ほとんどは似たような原因だった。
宿題をやってこないケースにおいて、原因となるのは4つしか無い。
1.本当に時間がない。
2.よく考えずに依頼を引き受けてしまったが、実は全く依頼事項の趣旨がわかっていなかった
3.能力不足
4.サボタージュ
1.のケースは簡単に解決する。宿題を出す側が、「これをやる時間、取れますか?」と聞くだけで良いのだ。いつやるかを聞き、時間の見積を聞けば大体終わりそうかそうでないかはわかる。この場合、「ここに時間を確保してください」とスケジュールに入れてもらえれば大体期限までに仕上げてもらえる。
2.のケースは多少厄介だ。「趣旨がわかっているかどうか」を確認するのが難しいからだ。しかし、これも解決は可能である。殆どの場合、「最初の部分」を依頼を出す際に一緒にやって、「成果物のイメージ」を共同で作り上げてしまえば、ほとんど失敗はない。
3.のケースはさらに難しい。「能力不足」は短期間では解消しないからだ。したがって、「誰に依頼したら良いか」は、宿題を出す側がきちんと考えなければいけない。能力不足が疑われる場合は、期限までの期間を細かく区切り、途中の状況を逐一報告してもらうほうが安全である。だからこの場合、マイルストーンを設定することが解決策だ。
4.が最も厄介である。サボタージュは「意図的にプロジェクトなり依頼事項なりを妨害する意図」があるからだ。これは決して珍しいことではない。また、意図的な妨害を行っているのが単なるヒラ社員ならば良いのだが、権力者の場合は更に解決が難しい。
この場合は、プロジェクト内、もしくは当事者同士での解決はまず望めない。レイヤーをひとつ上げる、すなわち、更に上の権力者を動かす必要がある。政治的な動きが苦手な方は苦労されるだろうが、必要な手段である。
進捗が悪い、あるいは頼んだことをしっかりやってくれない、ということで悩んでいる方は、試してみていただければと思う。