a0001_012961「任せて下さい」という言葉は素晴らしい。「私が責任をもってやります」という表明だ。

部下にそう言われると、逆に上司は「失敗してもオレが責任をとってやる」と言いたくなるのであるが、前職で、これとは正反対の企業に訪問したことがあった。

 

私 「では、この資料の空欄をを埋めていただければとおもいますが…どなたにお願いすればよろしいですか?」

プロジェクトメンバー 「…」

私 「それでは、プロジェクトリーダーの◯◯さんに、割り振りを決めて頂いてもよろしいですか?」

リーダー 「そうですね…では、××さん、お願いできますか?」

××さん 「いや、ちょっと今週は忙しくて…私以外の人でもいいでしょうか?」

リーダー 「それでは、△△さん、大丈夫ですか?」

△△さん 「いえ、ちょっと私も…」

リーダー 「そうですか、安達さん、ちょっとまとまった時間出来る人がいなさそうです。来週までということでしたが、もう少し伸ばせませんかね?」

私 「伸ばすのは構いませんが、その分プロジェクトの完了が遅れる可能性がありますが…それでもいいですか?」

リーダー 「そ、それは困ります。この宿題、みんなでやってもいいんですよね?」

私 「もちろんです」

リーダー 「であれば、××さんと、△△さん、お二方にお願いできますか?」

××さん 「まあ、それなら…」

△△さん 「仕方無いですね。」

私 「ありがとうございました。では、どちらかの方に責任者になっていただけますか?」

リーダー 「責任者が必要なんですか?」

私 「はい。」

リーダー 「責任者、というとオーバーなので、2名とも担当、と言う形ではダメですか?」

私 「いいですが、その場合、プロジェクトリーダーの◯◯さんに、責任者になって頂いてもいいですか?」

リーダー 「責任者の件ですが、この場で決めないといけないでしょうか?」

私 「わかりました…今日中に責任者を決めて、お名前をメールで送ってください」

 

だが、「責任者」の名前は2日たっても送られてこなかった。

私はリーダーに電話を入れた。

 

私 「責任者、結局どなたになりました?」

リーダー 「その件ですが、ご連絡しようと思ってました。実は、「責任者」を決めない方がウチとしてやりやすいので、決めませんでした。」

私 「…どういうことでしょう?」

リーダー 「忙しいので、責任者は嫌だと彼らは言っています。2名には努力してもらってますので、きちんと終わらせると思います。」

私 「…わかりました。それであれば結構です。」

 

嫌な予感がしたが、結局私のほうが折れ、1週間後まで待った。

予想通り、2名は宿題を終えることが出来なかった。それどころか、宿題をほとんどやっていなかった。

 

 

 

 

私は、なぜあそこまで責任者を忌避するのかがとても不思議だった。

 

そして、その理由はこっそり後からリーダーが教えてくれた。

この組織は「減点方式」によって評価が決まっていた。評価制度には「納期厳守」の文字があり、納期を守れなければ評価を下げる、というものだった。

 

「何かができる」という加点方式によって評価するのであれば、人は進んで責任を引き受ける。

しかし、「何かができないこと」によって減点され、評価を決定するような組織であれば、人は「必ずできること」にしか手を出さない。

 

そういう話を目の当たりにした会社だった。今でも強烈に覚えている。