コンサルティング会社ではかなりの期間にわたって営業をやっていたので、提案書を書く機会は比較的多かったと思う。
しかし、「提案書」は非常に厄介なシロモノだった。
作るのにはかなりの手間がかかり、外せば仕事がもらえないばかりでなく、それまでの労力も無になってしまう。だから、前職では「提案書は相手から言われない限り書かない」というルールもあったくらいだ。
ただ、一度「作る」と決めたときはかなり神経を使いながら作る。言葉の一言一句、誤解のないように、コチラの言いたいことが伝わるように書くには、相当の訓練が必要だった。
おそらく、どうにかまとまったものを作れるようになるには、最低でも100個、200個の提案書を作る必要があると感じる。
そのなかで、どうにか自分なりの提案書ルールをつくろうと、上司に教えていただいたり、以前の提案書をひっくり返したりしてまとめたのがLIG社のブログに投稿した、コンサルティング会社で学んだ「相手に響く」提案書の書き方という記事だ。
あくまで私見なので、参考程度にとどめておいていただければと思うが、何かの参考になると思い、コチラにも転載することとする。
———以下転載———–
そもそも提案とは?
物売りであっても、Webサイトの制作であっても、はたまた飲食店であったとしても、仕事を取らなければ会社は潰れてしまいます。
そして、商品が巷にあふれているいま、仕事を得るためには「買い手」に自分たちのサービスや商品の魅力を十分に伝えるために、「提案」が必要です。
もし「提案」がなければ、お客さんは「他と何が違うの?」とか、「我々がそれを買う理由は?」といった情報をすべて自分たちだけで調べなくてはいけません。やっぱり「売り手」からの情報提供は大切です。
でも、本音を言えば、お客さんは「提案」なんて欲しくないんです。
10年以上コンサルティング会社で働いてきましたが、「提案」ってやっぱりどこか上から目線だし、「そんなこと言われなくてもわかってるよ」と言いたくなる提案書もたくさん見ました。場合によっては「押し付けがましい」なんて言われて、とぼとぼ会社に帰ってきたこともあります。
だから、「話を聞きたくないお客さん」に対して、きちんとこちらの良さを伝えること。これが、提案の大事な目的でもあります。
特に大きなお金が動くプロジェクトや、社内の団結が必要な改革など、沢山の人を巻き込むような提案は、それだけ手間がかかり、そのためには「提案のストーリー」、そして「提案書」が必要です。
もちろん、「提案書の書き方」に正解はありません。
多くの方は我流で提案書を書かれていますが、それでも全く問題はないんです。結局、人となりが提案書には出ますので、その人の個性を反映した提案書が良いケースのほうがむしろ多いです。
でも、提案書を書き慣れない人にとっては「自由だ」と言われても、逆にそれがハードルを高くしているのも事実です。「自由って言われても…」と思う方も多いでしょう。
私もそうでした。
そんな時、当時の上司が「提案書の書き方」を教えてくれました。上司は25年以上もコンサルティングに関わっていたので、その知見は非常に役に立ちました。
コンサルティング会社で学んだ「相手に響く」提案書の書き方
STEP1 「お客様のご要望」を書き出す
殆どの人は提案書を書く際、提案内容から書き始めていませんか?
これ、実はやめたほうがいいんです。大抵の場合、提案内容から書くとハズします。つまり、お客さんの要望と提案がマッチしないという状態になりがちです。
では何から書くかというと、鉄則として、「お客様のご要望」を書き出すことから始めます。自分でわかっているつもりでも、書き出すとうまくまとめられないケースもあるので、必ず何かに書き出してください。 書き出してみると、「要望をきちんと聴けてないな」ということがはっきりと分かります。
逆に、ここがスラスラ書けるようになっていれば、一人前です。
- 例
-
- ◯◯万人の見込み客を獲得する
- メールアドレス◯◯万アカウントを取得する
注意点として、「解決策」はここに書いてはいけません。あくまで「得たい結果」だけを書きます。例えば、「◯◯万人の見込み客を獲得するためにXXの実施」と書いてはいけないということです。
ついつい解決策が自明な場合には書いてしまいがちなのですが、ここで解決策を書いてしまうと、「ほんとうに効果があるの?」とお客さんに突っ込まれた時にきちんと説明できる資料が抜けてしまいます。あえて「得たい結果」と「解決策」を別に書くことで、提案書に説得力が生まれます。
STEP2 「要望を解決するための施策」を書き出す
提案は要望への解決策に他なりません。したがって次は、「お客様の要望を満たすために一体何をしなければいけないか」を書き出します。ここでの注意点は「施策を絞り込んで、最も効果の高そうな活動だけを3つ程度に絞り込んで書く」ことです。
施策を実行するのは時間もお金もかかるので、そういったものを5も10も出してはいけないということです。さもなくば、施策は絵に描いた餅です。
- 例
- ◯◯万人の見込み客を獲得するための施策は3つあります。
1)効果的なWebキャンペーン
理由:◯◯◯2)キャンペーンと同時に、各種媒体へのPR活動
理由:◯◯◯3)1.2を行うため、専任の社内人材の育成
理由:◯◯◯
また、上司がこだわっていたのは「施策は1枚にまとめる」ということでした。これは、提案書をじっくり読む時間のない人にも、「このページだけ読んでください」というためでした。
STEP3 「弊社の提供する解決策・サービス・商品」を書き出す
お客様に、「解決するための施策」を納得していただいたら、ここで初めてそれを実現するための「弊社の提供するサービス・商品」を書き出してください。その際に、サービスや商品のスペックが、施策と対応していることがひと目で分かるように、一覧表などを作っておくとGoodです。
- 例
- 施策1および2→弊社の◯◯サービスの実施により実現します
【◯◯サービスの詳細】施策3→弊社の◯◯育成プログラムにより実現します
【◯◯育成プログラムの詳細】
STEP4 「スケジュール・体制・予算」を書き出す
どれくらいの期間で求めていることが実現するのか、どのような体制が必要か(お客様側と弊社側の両方)、そして予算です。予算はスケジュールや体制と連動するので、安いパターン、高いパターン、そしてオススメのパターンと3パターンほど用意すると良いです。
- 例
- 1.コストパフォーマンスコース
3ヶ月で◯◯という結果を出すためのプロジェクトです。
・施策1、2
【やるべきことの一覧と工数】
・施策3
【やるべきことの一覧と工数】2.エクスプレスコース
6ヶ月後に◯◯を実現するためのプロジェクトです
・施策1、2
【やるべきことの一覧と工数】
・施策3
【やるべきことの一覧と工数】
3.フルサポートコース
6ヶ月後に◯◯を実現するが、十分な社内リソースを避けない場合に、ご選択いただくコースです
・施策1、2
【やるべきことの一覧と工数】
・施策3
【やるべきことの一覧と工数】
STEP5 「留意事項」を書き出す
どんなプロジェクトにも「お客さんに協力してもらわなければいけないこと」があります。これを書かないとお客さんが自分たちの負担を判断できず、プロジェクトが棚上げになることもあります。
したがって、「顧客の社内体制」、「顧客の負担する工数」、「仕様の凍結日」、「見積の前提条件」などは、忘れずに記述しておくべきです。
STEP6 目次を書いて、清書する
最後に目次を書きます。上のステップを確実に行っていれば、目次を作るのはさほど難しくありませんが、ページを間違えたりしていると、プレゼンテーションの時に恐ろしく寒い思いをしますので、念入りにチェックをします。
また、前職では清書したら必ず「プリントアウトして」チェックをすることが鉄則になっていました。
自分で書いたものには大体の場合「飽きて」いるので、紙で出し直すことで新鮮に見ることができ、誤字やミスに気づきやすくなります。
- 提案書構成例
- 0.表紙(タイトル、およびサブタイトル)
ポイント:提案の機会を貰ったことに対するお礼を表紙のすぐ次に入れてもよい1.目次
ポイント:精緻に書く。できるだけ顧客の使っている言葉を使う。専門用語は避ける2.お客様のご要望
3.要望を解決するための施策
ポイント:3つの施策を1ページにまとめる4.弊社の提供する解決策
ポイント:できれば図や表形式で一覧性を重視5.スケジュール・体制・予算
6.留意事項
おわりに
以上で提案書の作成は完了です。提案書を作るときに「どうしても筆が重い」という方は、是非試してみてください。