Social_contract_rousseau_pageまえがきに「有史以来、人間の精神に最も大きな影響を与えた本として、イギリス労働党の学者キングスレイ・マーチンは、『聖書』、『資本論』そしてこの『社会契約論』をあげている。」とまで書かれている、岩波文庫の ルソー著「社会契約論」を読んでみました。(なかなか良いまえがきだと思います)

 

彼はどのように既成の国家観をイノベーションしたのか。私は別に専門家ではないですが、本のストーリーを追いかけることで考察してみたいと思います。

 

 

のっけから第一編の最初でいきなりイイ事言ってますよ。

 

「投票権を持つということだけで、私は政治研究の義務を十分課せられる」

 

シビレますね。多分、オマエごときが、偉そうに。と言われないように「義務」という表現を使ったのかと邪推してみました。昔も今も同じですね。

 

そして、大前提として、

 

人間は自由なものとして生まれた

 

と断定しています。みんながそう信じるような前提条件を与えます。そして、当時の支配者層に対する批判を言うのです。

 

強いものの権利ってなんだよw、そんなもの無いよ。単に弱いやつを力で押さえ込んでるだけだろ。ちょっと考えればわかるじゃんwww。だから「王権は神が与えた」なんて、嘘でーす。

 

誰も、奴隷になりたくないでしょ?だから、無条件の服従を強要するような法律や制度は無効です。

 

そして、読者はここで、「でも、今の制度を否定するのはカンタンだけど、これに代わる制度はあるの?」と聞きたくなると思います。そこでルソーは満を持して、

 

よくぞ聞いてくれました。実は「社会契約」がいいと思うんですよ

 

そしてその社会契約は、「国民の身体と財産を守り、かつみんな自由でもいられる」という国のあり方を実現すると述べるのです。おお、なかなかすごいですね。

で、「社会契約の中身は?」と聞かれると、ルソーは、

 

「国民がみんな投票して、投票結果にみんなで従う。」っていうのがいいんじゃない?昔の都市国家ではこうやってたよ。

 

と、事例を上げて説得してます。事例、大事ですね。

 

で、「投票結果にはみんなで従う」っていうのがミソ。投票結果は「みんなの意思」だけど、「あなたの意思」でもあるから従ってね。

 

え?オレはみんなと別の案に投票したって?こんなの自由じゃないって?

ノンノン、「自由って、みんなの意志に従うことを言うんだよ。これ、一般意志って言うし。」

 

でもこれじゃ納得行かないですよね。ここからルソーは説得モードです。

 

納得いっていない人いるね。よしよし、ここ大事だから、もっと説明してあげよう。

もし投票で決まったことに絶対従わなくちゃいけない、ってことになったら、自分だけが得をして、まわりの人たちが大勢損をする、という法律ができると思う?

出来ないよね。変な法律ができると、いつ自分の身に帰ってくるかわからないし。

だから、「社会契約」ができると、みんなが自分のことだけ考えるのではなく、社会のことを考えて投票するようになるんだ。これ理想的じゃね?

 

なかなかロジカルに説得してきます。ここで第一編は終了します。いかがでしょう。当時の社会情勢を思えば、いかに革新的であったか、そして現代にも通じる思想であると思います。