「ブラック企業と言わないで欲しいです」と、その人は言った。
彼は有名な「ブラック企業」で働く社員であり、5年間、そこで頑張って働いてきた。
ブラック企業、という言葉は当初、単なるネットスラングのようであったが、今ではすっかり市民権を得ており、毎年「ブラック企業大賞」なる表彰式まで行われている有り様だ。
「ブラック企業大賞2014」はヤマダ電機が「大賞」。たかの友梨、すき家にも部門賞
「ブラック企業大賞」(主催・ブラック企業実行委員会)は、2014年で3度目となるが、9月6日午後、東京都内で行われた授賞式で大賞などの入賞が発表された。
ブラック企業実行委員会は、労働相談にかかわる弁護士や市民団体、労働組合幹部らで組織されている。
(The Huffington Post)
低賃金労働、法律違反、高離職率など、「ブラック企業」と言われる企業には何かしら原因があるのは確かだ。「心外だ」という経営者もいるが、そのようにレッテルを貼られることを経営者は謙虚に受け止めなくてはいけないだろう。
しかし、そこで働く社員はどう感じているのだろう。冒頭に紹介した彼は、このように言った。
「自分が働く会社をブラック企業と言われると辛いです。もちろん、人に自分のような待遇を勧めることはしません。様々な批判の中で言われることは大体その通りだと思います。」
私は、「自分が勤めている会社への批判は嫌なのですか?」と聞いた。
彼はすこし考えていたが、こう言った。「私は、自分の仕事を誇りに思っています。どんなところにもやりがいを見つけるのが、大事だと思っていますから。」
私は思わず、「待遇が悪くても?」と聞いた。
彼は、ためらいがちにこう答えた。
「ソーシャルゲームに何十万も突っ込む人いますね。でも、その人が納得しているなら、いいんじゃないですか?もっと言えば、私みたいな人間を雇ってくれるところはそう多くないです。「今の仕事もやりがいはある」と思わなければ、私は不幸になってしまう。確かに、私は経営者に搾取されているかもしれません。でも、誰が儲けたか、っていうのは、私とは関係ない話です。」
彼は不幸なのだろうか。幸福なのだろうか。「ブラック企業」は、悪なのだろうか。
私は、割り切れないものを感じるのである。