ANJ77_ehonwomiru20141115105326500なんで働かないといけないんですか?」と聞いた学生への、とある経営者の回答。」をお読みいただいたある読者の方から、このような連絡を頂いた。

「働くこと」に関しては、相手が大人ということもあり、お金や信頼などが得られること、という説明に納得ができます。でも、子供に対しての「なぜ勉強するか」はどうでしょう。うちの子は言っても言っても勉強をしてくれず、ほとほと困り果てています。

「良い学校にいくため」「良い仕事につくため」と言っても、子供は全く聞いてくれません。そして私も、「勉強が好きか」と言われれば、特にそれ程好きなわけでもなく、子供に真正面から問われると、良い回答ができません。

「なぜ勉強しなければならないのか」について、良い回答を知りませんでしょうか?

働く、ということよりもさらに難しいご質問である。

 

 

実際、「なんで勉強する必要があるのか?」という問いに対し、子供に納得してもらえるような解を持っている人は少ないのではないだろうか。

特に、子供においては「勉強」といえば「学校の勉強」を指すことがほとんどだろうから、「なぜ学校の勉強をやらなければいけないのか?」という問いにキチンと応えるのは大人でもかなり難しい。

 

これについて、私が「ゲーミフィケーション」を調べている時に出会った、ある先生のお話を引き合いに出すことが多い。

それは、以下のようなものであった。ご参考となれば幸いである。

 

—–以下は先生の話—–

 

「なんで勉強しないといけないの?」という問いをする子供の気持ちを考えてみる。するとほとんどの子供は

「他に楽しいことがいくらでもあるのに、なぜつまらない勉強をすることにこれほどの時間を使う必要があるのか」

と聞いていることがわかる。

 

これは、子供たちに聞いてみるとよく分かる。試しにこう聞いてみると良い。

「なるほど、学校の勉強をしたくないんだね。」

「うん。」

「つまらない?」

「うん。よくわからないし…」

「テレビを見ていたり、漫画を読んだり、ゲームをするほうが楽しい?」

「うん。そうだね。友達と遊んでる方がずっと楽しいよ。」

 

そして、こういう子どもたちに、「将来いい会社に入ることが大事だからだよ」と言ったり、「勉強しないといい学校に入れないよ」「お金に困るよ」と言ったりすることはほとんど効果が無い。

「別にいい会社に入りたくないし…」

「いい学校に入ったからなんなのさ」

「別にお金なんて欲しくない」

と言われてしまうのがオチである。

 

こんな時、大人はどうすればいいのだろう。考え方として次のようなものがある。

 

1. 「なぜ勉強しなければならないのか」という問いには答えない

この質問は、生徒が指導者に対し、目の前のものがつまらないという苦情を述べているだけである。したがって、哲学的な回答や、人生の意味などを説いてもこの疑問は解消しない。

したがって、この問いに真正面から答えてはいけない。「今やっている勉強で、どこがつまらない?」と聞くことから始める。

 

2..「将来」というキーワードを使うことをやめる。

「将来になったらわかる」

「将来役に立つ」

は、あまりやる気に対して効果的ではない。

大人であっても「不確定な将来」のために努力を継続する事が出来る人は少ない。指導者は、「今、目の前の勉強をどう楽しくすればいいか」に注力する。

「我慢をさせること」は勉強の継続のために必要な要素ではあるが、メインの要素ではない。ちょうど、ゲームにおいて「レベル上げ」がメインの要素ではないのと同じである。つまらない作業であっても、メインの要素が面白ければ、生徒は耐えることができる。

 

3.知識のうまい活用方法を提示する。

ゲームばっかりやって、勉強しないのは困りものだ、という大人が多いが、つまらないゲームや漫画は、大人も子供も興味を持たない。

本質的には勉強も漫画もゲームも全く同じである。異なるのは、生徒へのコンテンツの差し出し方だけである。指導者の提供の仕方次第で、勉強はつまらなくも面白くもなる。

実際に、このような事例がある。

 

ある理科の先生がいた。その授業は、「太陽の通り道」について学ぶ回だった。

その先生は生徒に問いかけた。

「もし、みなさんが知らない町に来て、東西南北がわからない時、どちらが南かどうやったらわかるだろうか?ただし、今日は曇りで太陽がどこにあるかは見えない。」

生徒はそこで想像力を働かせ、いろいろ考える。

「人に聞く」

「地図を探す」

など、色々な回答が出る。

先生はそこで、「私なら、人も地図も要らない。少し街を見るだけでわかる」

という。

生徒たちは興味をもつ。先生はどうやってこれを解くのだろう?

先生は言う。「家の、ベランダを見なさい。多くの家のベランダがある向きが、南だ」

生徒たちは、不思議そうな顔をしている。

「なんで、皆が南にベランダをつけるか、教えてあげよう。それは、太陽がどのように動くかと、深く関わっている」

こうして、生徒は種明かしを聞く気になる。

 

単なる「太陽は南の空を通る」という法則を面白くするため、「この知識はどのように活用されているか?」を用意するのが、良い指導者だ。適切な問いによって、生徒の興味を引き出し、法則についての理解を深めさせることが重要だ。

実際、法則そのものよりも、その法則が生まれた経緯を知るほうがはるかに面白い。大人であっても、「微分・積分」はなぜ生まれたのか?という話を聞けば、微分積分を勉強してみたくなるだろう。

 

4.指導者が、勉強を面白いと思わなければ、生徒は勉強を面白いと思えない。

以上に述べたように、「勉強したくない」=「コンテンツが面白く無い」と読み替えて良い。これは、生徒一人ひとりが独力で克服することは非常に難しい。また、面白さを感じるポイントは一人ひとり異なるので、指導者は生徒一人ひとりに合わせて話を変える必要がある。

特に小中学生において勉強で挫折している生徒は、指導者、すなわち「先生」や「親」から、「コンテンツの面白さ」を十分に説明してもらっていない可能性が高い。

そこには、「先生」や「親」もまた、算数や理科、国語などのコンテンツの面白さを把握していない、という問題も潜んでいる。

生徒がある程度自分で「わかる」「解ける」ようになるためには、まず「先生」や、「親」が、算数や理科、国語といった勉強の面白さを理解する必要がある。子供に勉強をさせたければ、まず親や先生が、勉強しなければならない。

 

 

 

以上である。「勉強」には諸説あり、小難しい事をいう人もたくさんいるが、現場においては、「目の前におかれた問題をどのように面白く加工できるか」ということのほうが、「教育論」よりも遥かに効果があるとその先生は仰った。

私もそのとおりであると思う。

 

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