534397063_a157b07641_zリーダーが現場で悩む問題は矛盾に満ちている。「あちらを立てればこちらが立たず」と言った具合だ。例えば以下のような問題である。

・品質か、コストか。

・やりたいことを取るか、お金を取るか。

・顧客の言うことを取るか、部下の言うことを取るか。

・長期を取るか、短期を取るか。

 

自分自身の問題もあれば、部下に関わることもあろう。「どっちを取ればよいのだ」と頭を抱え、ストレスを貯めこむ人も少なくない。

あるいは、パートナーから「私と仕事、どちらが大事か」と迫られる人も多いのではないだろうか。この選択も「仕事かプライベートか」の選択という意味では、一種の矛盾と言える。

 

そこで思考停止し、矛盾の対立ができない人、あるいは意図的に矛盾の解消を拒む人もいる。

・「プライベート重視です」という発言

・短期的な業績の追求で、長期的な施策を放置する

・コストカットの圧力が強く、品質向上を諦めてしまう

だが、これでは進歩はない。

 

真に有能なリーダーは、矛盾を統合する存在だ。それは様々な経営者や管理職、組織の幹部などを見ていて強く感じる。実際「有能さ」と言うのは、矛盾を発見したときの態度に強く現れる。

 

彼らは、こう考えている。

「矛盾はチャンスである。我々を他の競合の手の届かない高みに押し上げることに繋がる。矛盾を発見しそれを活かせ。」

だから、本質的に有能なリーダーは矛盾の存在により、皆を鼓舞する。

「品質と納期を両方満たすことで、我々は圧倒的な存在になれる」

「仕事とプライベートを両方同時に最高の状態にすることが、我々にとって不可欠である」

それは、とてもクリエイティブな行為である。対立する二つの事柄は高い次元で統合されるべき問題である、と確信している。

そしてそれが、リーダーたる所以であり、彼が打ち出すビジョンが魅力的であるかどうかの判断基準だ。

 

 

18世紀から19世紀にかけて活躍した、哲学者のヘーゲルは「歴史は、対立と、その対立が一段高いところで解消されることで発展してきた」という。

リーダーが矛盾を統合する存在である、ということは普遍的な真理である。

リーダー論や管理職研修では「リーダーはバランスを取る」と語られることも多いようだが、必要なのはすべての人に良い顔をする「バランス」ではない。

もう1つ高みに登ることにより、全ての人を見渡す解決策や思想を打ち出すことこそ、リーダシップの本質である。

 

 

 

 

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(Photo:Stefano Corso)