昨日の会合で、ある議論が持ち上がった。もし商品が同じなら、
- 労働者に優しい職場
- 労働者に厳しい職場
のどちらがより会社として成果が出るか、が議題だった。
シミュレーションの前提は概ね以下のとおりだ。
・労働者に優しい職場
給与がやや良い。(例:同業よりも10%程度良い)
残業なし。
多用な働き方を認める。(例:在宅、週3日勤務など)
顧客への対応は各人が自由に行う。
個人個人の裁量が大きい。
・労働者に厳しい職場
給与は並。
少人数で回すため残業は結構ある
必ず定時で仕事
完璧な顧客対応マニュアルがあり、厳格なルールに則って、標準化されたサービスを提供
個人個人の裁量は小さい。
議論は様々な方面へ飛んだが、結局のところ主要な争点は、「管理しないほうが、人は成果を出すのか?」であった。
前者を支持する人は、管理しなければ人は進んで働き、成果を出す。また、多様性を重んじればイノベーティブなサービスを生み出せるという。
後者を支持する人は、管理しなければ人は怠け、利益は出ない。また利益を最大化するにはいかに「仕組み」を作り、人に依存しないで成果が出せるようにするかだという。
議論は平行線であった。どちらにも成功例と失敗例があったからだ。だが、ある人がこう言った。
「結局、「商品がどのようなものか」によって異なりそうだ。例えば
知識集約産業、すなわち「アタマ」を雇っている場合は、前者のほうが成果が出る。人は資産であり、それまでになかった、優れたアイデアで差別化することにより利益を生み出すような会社を目指している場合だ。
労働集約的産業、すなわち「手」を雇っている場合は、後者のほうが成果が出る。人はコストであり。ほかと比べて安く、品質の高いサービスを提供することで差別化し利益を生み出す会社を目指している場合だ。
どうだろうか?」
すると、他の方も言った。
「その話は極端な事例ですよね、現実的には多くの会社はその間にいる。でも管理を強化して利益を出そうとするか、それとも人の知識を活用して利益を出そうとするか、その方向性のちがいにより、企業は2極化していくんじゃないですかね。
いやもっと言えば、あるいは、同じ企業の中でも「アタマ」と「手」の人たちに2極化するのでは。」
別の方が言う。
「Amazonでは労働組合ができたそうだ」
そういえば、報道でそのような話があった。
鈴木氏が問題視しているのは「業務改善計画(PIP)」を用いて退職を勧奨する手法。従業員に対して「仕事内容などが水準に達していない」などとして改善計画を提出させ、改善されなければ退職を勧めるもので、リーマン・ショック以降、外資系企業で多くみられるという。
実際にPIPの対象となったというアマゾン・ジャパンの従業員は「自分の仕事に改善すべき点があれば改善したい。何を改善すれば良いか聞いたが、『自分で考えろ』と言われただけだった」と証言する。「自己批判をさせ、絶えず『(会社を)辞めた方が良いのではないか』などと圧力をかけられた」などと訴えた。
ある方がこれについて、
「この報道だけだと判断はできないけど、「何を改善すれば良いか聞いたが、『自分で考えろ』と言われただけだった」というのは当たり前だよね。」
と言う。
「自分で考えられない奴は「アタマ」じゃなくて、「手」だから、Amazonとしては要らないんだろう。」
賛同する声と、批判する声が聴こえる。
上のようなことを考えていくと、結局「アタマ」を雇われている人と、「手」を雇われている人では、給与以前の問題として、労働条件、自由度、管理のされ方が恐ろしく異なる。そして、その割合は事業の性質に大きく依存する。
だが今後、それが先鋭化するようであれば
「知識集約的な仕事」に就く人はますます充実し、自由を獲得し、大きな報酬を得る。
「労働集約的な仕事」に就く人はますます疎外され、不自由になり、僅かな報酬しか得られない。
ということになる。
ピーター・ドラッカーは著書※1の中で、「超競争社会」を予言した。
知識社会は、われわれが知るいかなる社会よりも競争の激しい社会である。知識は普遍であり、成果をあげられないことの弁解ができなくなる。
恵まれない国というものがありえなくなる。あるのは無知な国だけである。このことは、あらゆる企業、組織、産業について言える。一人ひとりの人間についていえる。
彼の言う、超競争社会が到来しているのかもしれない。
・筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/yuya.adachi.58 (フォローしていただければ、最新の記事をタイムラインにお届けします))
・筆者Twitterアカウントhttps://twitter.com/Books_Apps
・大学・研究の楽しさを伝える、【大学探訪記】をはじめました。
【大学探訪記 Vol.17】「石がどのようにできたのか」という究極の疑問に解を出す。
【大学探訪記 Vol.16】慶応大学で最も特徴のあるゼミの一つ「牛島ゼミ」の秘密を聞いた
【大学探訪記 Vol.15】起業イベントで出会う大学生ってどんな人か?
・仕事の楽しさを伝える、【仕事のチカラ】をはじめました。
【仕事のチカラ Vol.4】何をやるかを決めずに、気の合う仲間と起業する。そんな人生もいいじゃない。
【仕事のチカラ Vol.3】プログラミングを独習し、その勢いで独立した、28歳の凄腕プログラマーの話。
【仕事のチカラ Vol.2】破天荒な26歳が起業したネタは「靴磨き」
・ブログが本になりました。
※1イノベーターの条件(ダイヤモンド社)
(Photo:Dave C)