サイバーエージェントの社長が辞めた社員に激怒している、という記事が日経新聞に出ていた。
私が退職希望者に「激怒」した理由 (藤田晋氏の経営者ブログ)
「ネットバブル」と呼ばれた当時、我々は複数の業界で、競合となる大企業から人材を次々と引き抜いていました。この時、どの業界であっても、業界1位と2位以下の反応は好対照でした。我々の引き抜きを行った際、業界1位の会社は転職した社員にも我々にも、「出入り禁止」と言わんばかりにカンカンに怒っていました。一方、業界2位以下の会社は、「辞めても、仲良くやろう」「これを機に会社同士の新たなコラボレーションが生まれるかもしれない」と寛容でした。
そうした態度は、とても良い会社に見えますし、良い人たちに思えますが、この時私は、あることに気づいたのです。すなわち、この「甘さ」が1位と2位以下の差につながるのだと。当時1位で激怒していた会社は、今でも業界首位を堅持しています。
長い目で見れば、社会に対しても社員に対しても、良い会社とは永続性のある強い会社のことだと思っています。そのためには、優秀な人材を競合には渡さない、という毅然とした態度も必要だということに、その時、気づきました。それから私は、不寛容と言われようが、社員が同業の競合に引き抜かれた場合は「激怒する」という方針を決めたのです。
藤田氏の発言には賛否両論あるようで、「当たり前だ、支持する」という意見もあれば、「器が小さい」と非難する声も多い。
私個人的には、彼は創業社長なのだから、「好きにすればいいんじゃない」という印象だ。上場企業とはいえ、オーナー企業色が強い会社だ、彼がカラスは白いといえば社員は白いと言わざるをえないし、右を向けと言われれば、全員右を向くだろう。
そういうことができるのは、オーナーの特権なのだ。彼が積み上げてきた実績を考えれば、特に批判されるいわれもない。
しかし、この記事を呼んで私が一点だけ、「気の毒に…」と思ったことがある。
それは、彼は企業経営を「戦争」と思っているのではないかという点だ。業界一位だ、二位だ、そういうことが彼にとってはとても重要なのだろう。
「とにかく勝たなくてはいけない」そういう気迫というか、思いが伝わってくる文章だ。
だから、「私とは考え方が違うな」という結論だ。
甘いと言われようがなんだろうが、私は企業経営を「戦争」とは思っていない。こっちが勝てば、あちらが負ける、というのはなにか古臭いものを感じる。企業というものは単なる社会の一組織であり、その役割として、人間が使える資源や知識のパイを大きくする存在、と思っている。
そういう意味では、新しいものを生み出したり、今までにはなかったマーケットを作り上げたりすることが企業活動の本質だと考える。本質的に重要なのは、競合との勝ち負けではない。
だが、彼の立場として、上場してしまったからには、短期的にも利益を出さなければならないし、競合との勝ち負けはとても重要だ。だから、彼は「戦争」をしなくてはいけない。
辛い立場だろうが、頑張って欲しいと思う。