7f148ff172d6100a148f663167045013_s年末に、ある経営者とお話をした。複数の会社を経営し、大変成功されている方なのだが、同時にかなり従業員に会社の利益を還元していることでも有名な方である。

彼の経営する会社では、従業員をほぼ全員、毎年昇給させたり、社員旅行で従業員を海外に連れて行ったりと、相当のお金を使っている。従業員も彼の期待に応え、よく働いてくれているそうだ。

しかし、中にはもちろん、「どうしても成果が上がらない」という方もいる。それでもその経営者は「成果が上がらなくても」昇給させているそうだ。

 

彼は、「この話をするとね、仲間の経営者に「甘い」と説教されるんですよ」という。

私が「なぜですか?」と聞くと、彼は、「「信賞必罰」を徹底しないと、会社の規律が緩むから、といわれます」と仰っていた。

 

私ももちろん、そのように考えていた。

成果の上がらない人を昇給させる、というのは、結構な勇気がいるし、体力のない会社には厳しい選択だ

私は、その方にこう聞いた。

「やはり、昇給させることが、従業員のモチベーションに繋がる、という考え方ですか?」

私は当然、その方が「マネジメントの施策」として、そういったことを行っているのだと思っていた。

 

ところが、その方は私の予想外のことを仰った。

 

「安達さん、成功って、実力だと思いますか?それとも、運だと思いますか?」

「…と言いますと?」

「いや、文字通りのことを聞いているだけです。多くのお金を手に入れ、名誉にも恵まれた人がいる。それは、本人の実力でそうなったと思いますか?」

「…普通に考えれば、実力も運もなければ、ダメだと思いますが…」

「みなさんそうおっしゃいますね。安達さんも同じことをいいました。でも、私はそう思っていません。」

「どういうことでしょう?」

「私は、「成功」は100%運だと思っているんです。」

「100%…ですか?」

「そうです」

「ずいぶん極端ですね。なぜそう思うんですか?」

「日本に生まれたことがまずラッキーです。親からきちんと教育をしてもらったこともラッキー、私が会社を起こした時に良い取引先に恵まれたこともラッキーです。全ては運が良かっただけでした。私は、それをたまたま享受できたに過ぎません。」

「でも、かなり頑張って経営されているように見えますが…会社が窮地に陥ったこともあるのでは?」

「頑張れるように生まれついた、ということも一つのラッキーです。」

「…」

「安達さん、甘いと言われるかもしれませんが、私は「たまたま頑張れない社員」がいることも含めて、会社だと思っているんです。彼は運がまだ向いてきていないんです。運は皆に分けなければいけない。だから、全員昇給させるんです。」

「…」

「おかしいですかね?」

「いや、おかしくはないですが…変わっていらっしゃいますね。」

「そうでしょうか。でも、私にとっては大切なことなんですよ」

 

 

彼は、マネジメントの施策ではなく、信念としてそれを行っていた。

「自分の成功は100%運」と言い切れるのは、逆に強い経営者なのかもしれない。

 

 

 

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