仕事において、生産性は非常に重要である。いずれの組織においても、生産性を高めるために、環境やモチベーションといった話は定期的に話題となり、あるいはチームの効率的な運営、暗黙知の共有などの推進が行われる。
だが、生産性の向上のために最も重要なのことは、そういった瑣末な話ではない。大きく生産性を向上させるためには、本質的な議論が必ず必要となる。
それを私は、ある経営者から学んだ。
その企業はあるIT業だった。その経営者は「生産性向上」に並々ならぬ情熱を燃やしていた。彼は常に「生産性向上こそが、経営の鍵となる」と主張した。
私は、その秘密を知りたいと思い、彼に話を聞いた。
彼は、快くその秘密を話してくれた。
「我々は、かなり以前から生産性を高める工夫をしています。その中で、意味のあるものとそうでないものの差が徐々にわかってきました。
オフィスを綺麗にしたり、リモートワークを認めたりと、様々なことを試しましたが、最も効果があったのは、非常に単純なことでした。
つまり、やらなくていいこと、無駄なこと、これを極限まで減らすことが、最も効果が高かったのです。その他の話はすべて2次的です」
私は、「どういうことでしょう?」と聞いた。
経営者は言った。
「つまり、会社の中には余計な仕事がたくさんある、ということです。様々な理由で聖域化されている、つまらない仕事がね。
ですから、我々が最も熱心に取り組んだのが、「これは何のためにやっているのか、を考える癖付け」です。これが、最も生産性を高めます。」
なるほど、思い 「具体的には、どんな癖付けをしたのですか?」と私は尋ねた。
彼はこう答えた。
「簡単ですよ、「やらなくていいことの発見」を奨励しただけです。やらなくていいことは大きく3つから成っています。
1つ目は「成果を明確にしていない作業指示」これは指示を出す側の怠慢です。やる意味を考えていない。
2つ目は「面白くない仕事」…と言いたかったのですが定性的なのでこの表現は廃止しました。今は「一定期間、成果の出ていない仕事」に言い方を変えました。これならやめるべきかどうか判断できます。
特に、会議などはこれによく当てはまります。我々は会議も必ず1つ目の法則に従って成果を明確にしますので、会議も長く続けるとだんだん意味がなくなってきます。
その時は、成果を再定義しなければならないようにしています。だれでも面白く無い会議には出たくないですよね。
3つ目は「書類作成」です。書類は少なければ少ないほどよい。仕事の中で自然に出る記録だけ残すようにします。
いずれにせよ誰もが「何のために?」と言うことと、言われることを恐れてはいけないと思います。昔は「何のために?」と言われると怒る管理職や社員がいました。考えてないことがバレるからです。でも、結局そういう人が、聖域を創りだすんです。
「何のために?」を皆の口癖にすることで、生産性を圧倒的に向上させることができます。」
「個人でもできることはありますか?」と私は尋ねた。
「もちろん、生産性向上は個人でもできます。自分の胸に聞いてみて下さい。「この仕事の成果は何か、なんのためにやっているか」と。
もちろん、自分の一存で決めることができない仕事もあるでしょう。それでも取り組み次第で多くの仕事が削減できるはずです。」
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