現在は情報革命の只中であると言われている。これは、18世紀から19世紀にかけて起きた『産業革命』になぞらえて『情報技術』により社会や思想、体制や生活などが変化することを指す。
しかし、『情報革命』とは一体何なのだろう。これは、産業革命時に起きたことをもう一度見ることによって、学ぶことができる。
一般的に、産業革命は「蒸気機関の発明」が世の中を一変させた、と解釈されているが、それだけでは少々舌足らずである。産業革命の本質は「ある技術が、他の分野で次々と応用されていく」ことによる世の中の変化とされる。
具体的に言えば、蒸気機関は当初、水を汲み出すポンプとして登場した。それは直ぐに繊維産業の動力源として、さらにはそれを船に載せ蒸気船として、さらに陸上の鉄道に応用されることにより、結果的にひとつの知識が大量の応用を生み出す事となった。
なぜこのような広範囲な応用が成されたのか。それは、当時に起きた大幅な思想の変化によるものが大きいといわれる。すなわち、ピーター・ドラッカーの言うところの
経験は知識に、徒弟制は教科書に、秘伝は方法論に
という考え方だ。産業革命以前、「技術」というものは秘伝であり、それを身につけたくば徒弟に入るしか方法はなかった。
ところが当時の思想家、論理学者、数学者たちはそれを体系化するべく、『百科全書』のような技能を体系化し『知識』とするような活動を行った。こういった活動が結果的に、職人芸をより多くの人が使え、応用が効く形に変え、産業革命に貢献した。
これを現代の『情報革命』に適用するとどうなるだろうか。
『情報技術』が「属人化された技能」を『知識』に変え、皆が応用出来るようにするという事にならないだろうか。
一部の学者だけがアクセスすることが出来た情報が、情報技術により皆に公開され、
一部のグルメマニアだけが行くことの出来たお店が、皆に利用できるようになり、
一部の専門家だけが編纂することの出来た辞書を、皆が編集できるようになり
一部の人だけが持っていた人的ネットワークが、皆で共有できるようになり、
一部の人だけが持っていた価格交渉力が、皆で利用できるようになる。
それが『情報革命』の本質である。次に明かされる『秘伝』は何なのだろう。
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