朝日新聞の報道した、「サラリーマンだけど残業代ゼロ」について報道が物議を醸している。
政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)は、労働時間にかかわらず賃金が一定になる働き方を一般社員に広げることを検討する。仕事の成果などで賃金が決まる一方、法律で定める労働時間より働いても「残業代ゼロ」になったり、長時間労働の温床になったりするおそれがある。
(中略)対象として、年収が1千万円以上など高収入の社員のほか、高収入でなくても労働組合との合意で認められた社員を検討する。いずれも社員本人の同意を前提にするという。また、当初は従業員の過半数が入る労組がある企業に限り、新入社員などは対象から外す。”
年収が1000万円以上の民間労働者は全体の3.8%らしいので、適用されるのはほんの一部の人だ。産業競争力、という点では対して影響はないだろう。
ということは、おそらく本丸は「高収入でなくても労働組合との合意で認められた社員」だろう。本人の同意が必要とはいえ、「同意しない」という選択肢は評価を受ける立場としては選びづらいのではないかと思われる。
したがって、狙い撃ちされたのは「労組が存在する、ある程度の規模の企業の正社員」だ。
さて、このニュースを見て思ったのが、「なぜ、こんなことを政府が言い出したのか?」ということだ。
毎日新聞では次のように報じている。
”民間議員の提案は、特定の職務で「高収入・ハイパフォーマー型」(年収1000万円以上など)の社員については、本人の希望により、働き方や労働時間の配分を個人の裁量に委ねる。そのうえで給料は仕事の成果、達成度のみに応じて支払うとしている。当初は組合員数の割合が社員の過半数の企業に限定する。”
どうやら「ある民間議員」が議論の俎上にこのようなことを載せたらしい。どこかの経営者の片割れだろうか。
正直、気持ちはわからなくもないが、本当に現場のことをわかっているならば、こんなことは言わないだろう。
なぜなら、会社員の「成果」と言うのは、限りなく水物で、限りなく「個人の成果」としての切り分けが難しいからだ。
例え営業職という成果がわかりやすい部署にあってさえ、成果があがったのは
「たまたまついている顧客が良かった」
「たまたま商品が良かった」
「営業を手伝っているアシスタントが有能だった」
と言った理由で、「個人が頑張ったから」と簡単に言い切れない。間接部門や技術職、研究職などなおさらである。
会社員が会社員たる所以は、「時間を会社に売って、安定した給与を得る」ことである。残業代をなくせば、会社員の「個人事業主化」をすすめるということだ。
こういった施策が社会を安定させるとは思えないのだが、どうなのだろう。