小保方氏のSTAPに関する研究データ捏造が何かと話題になっているが、おそらく少し前に発覚したノバルティスのデータ捏造の方がより悪質だろう。
バルサルタン:通報の医師、捏造を直感 ありえない値(毎日新聞)
ノバルティス社の新薬の臨床研究に、ノバルティスの関係者が身分を秘匿したまま参加し、公正であるべき実験データを操作したとい疑いが持たれている。
また、京都府立医科大学・東京慈恵会医科大学・滋賀医科大学・千葉大学・名古屋大学がこの実験に協力し、論文を発表していることから、不正への協力の疑いは各大学にも飛び火し、ノバルティスは今年の1月に薬事法違反で刑事告訴されている。
なお、この事件を受けて多くの大学がノバルティスとの取引を停止した。
ノバルティスファーマ株式会社に関する医薬品の取引停止について(千葉大学医学部附属病院)
バルサルタン(ディオバン錠)採用中止のお知らせ(東京都済生会中央病院)
ノバルティスファーマ(株)の医薬品の取引停止について(京都府立医科大学附属病院)
ノバルティスは単なる「高血圧薬」に、「心疾患にも効く」というデータをつけ、これを営業にもたせて薬を販売していたというから、このデータそのものに全く信頼性がないということが発覚した以上、これは明らかに薬事法違反である。
また、「薬」という、人の命にかかわる分野でのデータ捏造ということもあり、影響は甚大である。
バルサルタンの売上は毎日新聞の記事によれば1兆円以上、大きなお金である。
” 府立医大チームはバルサルタンの臨床試験を経て最初の論文を09年に発表。試験には3000人以上の患者が協力しており、膨大なデータが残る。その後もどんな効果があるかを発表し続けた。ノ社はこれらを医師に宣伝し、バルサルタンを累計売り上げ1兆円の大ヒット薬に育てていた。”
ノバルティス全体がこういった捏造に関わってることは無いだろうが、お金が絡むと、このようなことを起こす人間が必ず出てくる。おそらく今回の一件も、氷山の一角だろう。
衆議院でも議論されている通り、他の製薬会社にもきちんと調査を入れてほしいものである。
だが、こういったことを再発防止できるのだろうか。Natureの査読者ですら、小保方氏の捏造を見抜けなかったということを考えれば、「すべての捏造」を見抜くのは不可能だろう。
しかし、定期的に重要な分野、大きなお金が動く分野に対して、「サンプリング調査」を入れることはおそらく可能だろう。
税務署の調査のように定期的に組織された科学者が再調査をする仕組みをつくっていくというのも、今後の課題となりそうだ。